サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第30回】
NEWS文化祭成功前夜の「孤独」
試合中はスタンドでじりじりしながら選手のがんばりを見る……そんなラグビーの監督が好き。野球はベンチで選手を呼んで指導する。サッカーはピッチ横で監督が叫び、吹奏楽は顧問自ら指揮棒振ることまでありだ。
その点ラグビーは、試合中のすべてを仕切るのはキャプテン選手。ピンチ時の声かけ、チームメイトとの関係も、しっかり練習でつちかっていざ本番。
文化祭のとき、先輩のT先生が言っていた。
「教員の役割は、スタートエンジン&ブースター。ときにナビゲーター」。
実情に応じ、文化祭リーダーを教員が務めることはある。経験のない生徒たちに、「文化祭は生徒のものだから好きにやりなさい」と言っても空中分解。原案の作り方、討議の仕方、スケジュールは?役割分担は?リーダー役を教員がやってみせ、「こうすりゃ成功する」を実演で教えることは「あり」だ。
しかし、「2年めも3年めも教員主導」は違うと思う。「吹奏楽・野球型」からやがては「ラグビー型」へ。カラダもアタマも「生徒のもの」へ。企画~運営まで生徒でできる―大きな成長が見られるのは、文化祭の醍醐味だ。
でも、文化祭直前はビミョーなんだな。当初、ボクの経験をありがたがって聞いてくれたリーダーたち。それまであんなにうなづいてくれたMさんもYさんもKさんも―彼ら彼女らは別年代のサトークラスのリーダーなんだけど―だよ、文化祭直前になって「言いたがり担任・サトー」に申し出てきた。
「……先生は黙っててください。ぼくが指示出しますから」
文化祭前夜、まだまだSNSで最後の打ち合わせをする生徒たちを見送ったあと、帰って担任は独り酒。でもこの淋しさを経験できたら、文化祭は成功だ。
佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科元教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。