サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第26回】
NEWS助さん格さんを探せ
「みんな私ばっかに押しつける」と悩む文化祭実行委員・Nさんの話を、T先生がじっくりきいている。手にはなぜかクラスの名列表。
「(名列を指さし)一人ひとりの顔を思い浮かべてみようよ。このなかで、Nさんが思う「ちっとも協力してくれない人」ってだれとだれ?」
Nさんの口から出る名前を指折って数えていくが、たいてい片手でおさまる。「心細いときって、「みんな」が反対してるって思っちゃうんだよねー」
明るい口調で名前を指さし顔を思い浮かべる。案外「味方」がいるものだ。
「明日、○○さんと△△さんに話してみるわ」
部屋を出て行くときのNさんの顔は、来たときよりも明るい。
そのT先生が「総合」担当となったとき、「やる限りは、形ばかりの「総合」を変えたい」と本格プランをつくったのだが、学年会議で反対が続出した。
「学年全員で取り組まないとできないのに……。みんな私に押しつけてばっか」
ン?これ、どこかできいたセリフだ。と、横から大先輩のM先生が、
「はて、本当に味方はいないのかな?探してみようや」
話に加わってきた。その手にしっかりあるのは、教職員名簿じゃないか!
「さあ、Tさんにシゴト押しつけて反対してるのは、このうちのだれなんだ?」
名簿を見せられ、T先生も気づいたよう。
「生徒相手なら言えるのに。私も、だれが一緒にやってくれるか考えよう」
明るい顔で名簿をチェックし始めたTさんに、ベテラン・M先生が言う。
「高齢の水戸黄門さまも、単独諸国漫遊は危ない。助さん格さんがガードしてるから、いい仕事ができる。まずはTさん学年の、助さん格さんを探そうや」
Tさん生まれる前の古い例え……かも?だけど、確かに言い得て妙!
佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科元教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。