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サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第24回】

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論説・コラム

子どもの背中40個、40通りの“社会”あり

「教師は“社会”を知らない!」。今までさんざん聞かされたことば。
 あんまり皆がそう言うからか、最近の教員志望学生さん、「何年か社会で勉強してから教職に就きます」って人が増えてきた。仕事にハマって、骨をうずめる人も多々。貴重な人“財”流出だ。

「何言ってんだい。“社会”を知るには、教員やるのが一番なんだよ」
「“社会”を知れ」とのたまう“ミンカン”の友人たちとよく言い合ったものだ。
「アンタが知ってる“社会”なんて、しょせん身のまわりだけ。その点、学校は違うよ。だって目の前に40人の生徒が座ってたら、彼ら40通りの“社会”を背負って来てるんだから」

「娘の担任」というだけで、縁遠い業界のおとうさんが、裏話を語ってくれた。
「近隣高校の柔道部顧問」というだけで、地元実業団相撲部の朝稽古も生徒たちの付き添いでかぶりつき見学の特権。たまたま来ていたプロの関取たちとちゃんこをご一緒し、相撲道をじっくり聞いた。
 家庭訪問先の文化住宅には、1DKに一家7人が住んでいて、そこで弟妹の世話をやく生徒の顔は、学校とは全然違って頼もしかったよなあetc.etc.……。

 教員になったからこそ知れる、“社会”はいっぱいある。家庭訪問のとき、曲がりくねった路地を自転車で先導してくれたF先生のことばが、今も耳に残る。

「しっかり見ときや。ぼーっとしてたら、見えるモンも見えへンで」
 
 
佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科元教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。

サトー先生の「きょういく日めくり」