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サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第22回】

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論説・コラム

『ねば』『れる』『たい』の交点探し

 最近の学校、やたら『やらねばならない』ことが多すぎる。「○○教育」と称するものだけでも、キャリア教育、人権教育、防災教育、情報教育、金融教育、主権者教育、消費者教育、法教育……食育とか服育なんてコトバもきくぞ。『やらねば』に押しつぶされそうな危険水域にある学校。そして教員。

「教員という仕事は、お金で買えない素敵なものをいっぱいもらえるところだ。子どもたちの成長を間近に見られるし、自分もいくつになっても勉強できるし」
 教職をめざす学生さんたちに、毎年そう言ってきた。本心だ。
「でも、いまの学校現場は、もはや無邪気に「やりがい」だけで教職を勧められない状況だよ。やりがい搾取(さくしゅ)横行だ」
 ずっと勉強会をともにやってきたSさんですら、最近よく言う。
「きっと『やりたい』をはるかに超える、『やらねば』が多すぎるんだろうな」

『やらねば』『やれる』『やりたい』―3ベクトルの交点をしっかり探す。『やらねば』がやたら増え、『やりたい』ことがなかなかできない昨今、ストレスが増えている。逆にうまく、『やらねば』と『やりたい』が交わったときは快感で、いつの間にか『やれる』幅が広がっていて、人はそれを「成長」と呼ぶ。他者がなんと言おうと、無理なもの意義を感じないものは「できません」とはっきり言いたい。意義をしっかり理解し、自分のなかで『やりたい』に転化できれば、『やれる』ベクトルは少しずつ長く、太くなるんだよね。

『やらねば』『やれる』『やりたい』の3ベクトル交点をしっかり探す―まだまだ教員として、「『ねば』『れる』『たい』」!

佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科元教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。

サトー先生の「きょういく日めくり」