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サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第20回】

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論説・コラム

AとZがくっつく快感

 40代。学び直しのため休職を決め、訪問したのが阪大・小野田正利研究室。
「教師の不祥事が連日報道されるけど、いい話もごろごろあるんですよ」とばかり、ぼくの研究テーマは「どうすれば学校の『内』と『外』とが相互理解できるのか」。しかし「学校へのイチャモン(無理難題)」がご専門の小野田教授からは、「あなたのやろうとしていることは、ちょっとウチの研究室とは違うな-。よそを当たってみてよ」とつれない返事。あきらめかけたとき、なぜか小野田さんが九州から大阪の大学に移ってこられた理由が、「探偵ナイトスクープ(※大阪の人気番組)がリアルタイムで見られるから」という話になった。
「九州では深夜のとんでもない時間にしか見られない」と小野田さんが力説されたとき、「ぽろっ」と言ったぼくの言葉が、その後の人生を変えることになる。
「ナイトスクープですか。ぼく、近々それに出ます」
 勤務校の生徒が依頼しボクも一緒に出演が決まった。いきなりほおかむりにふんどし姿で登場というヒドい話で……。これを聞いてた小野田さんがひと言、
「う~ん。あなたは、もしかしたらウチの研究室に必要な人かもしれない……」
 その後、小野田さんご自身も同番組に出演されることになるのだが、
「「学校への無理難題」と「学校内外の相互理解」は表裏一体かも知れないね」。
 ナイトスクープ話が、本筋の研究テーマに波及し大学院合格(もちろん筆記試験も突破したんだよ)、その縁が縁を呼び、その後、小野田教授の後を継ぎ阪大教職担当を拝命した。生徒応募の「ナイトスクープ」から思わぬ大展開だ。

 ジャンル問わず一生懸命やってると、一見まったくゆかりのない「A」と「Z」がつながる経験がたびたび。「ああ、くっついた!」のこのうえない快感に笑いさえ出る。思いがけない素敵といっぱい出合える―「教職」の大きな魅力だ。
 
 
佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科元教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。

サトー先生の「きょういく日めくり」