サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第18回】
NEWS30年選手も「逃げたい」願望
今日は“白状”話を。
「カリスマ」と呼ばれた北海道の元高校教員が、講演会で言った。
「(前略)3月は1年で一番落ち込む季節。なんせ生徒たちが卒業していなくなるんですよ、心にぽっかり穴があいたようで。4月に新しい生徒たちが入学してきてくれて、ぼくはやっとまた元気を取り戻せるんです」
これを聞いて正直思った。「自分はそこまで熱くなれないよー」。
毎日毎日雑事に追われ、「なんとかかんとかやっと3学期にたどりついた。卒業式まであと〇日」、指折り数えたこと、何度あったろう。
生徒のいなくなった教室や職員室で行う後かたづけ、教材作り大好き。またまた「新学期」が近づくと、ウツウツした気分になってくる……だからこの時期、目一杯自分を鼓舞する旅(=非日常)に出るんだけど。
朝。学校最寄り駅で止まった電車から降りずに、このまま年休出してどこかへ行ってしまおうと思ったことしょっちゅう。実行数度。
なんとか駅で降りたけど、学校までの足取りが重い日なんて何度もあった。
「先生って、『おはよう』の声おっきいですよね」
前にだれかから言われたけど、朝、生徒を見つけると、腹からの大声であいさつする。生徒が「あっ、ああおはよう」と応じてくれ、「どうなん、最近?」「まあまあ」と、会話が始まる。このあたりからかな、いつの間にかウツウツを忘れあとは一気に“日常”突入、自分を覚醒させるための「腹式おはよう」だ。隣席の先生は朝からロックがんがん聞いてたし、「元気が出る小説リスト」つくって交換しあってる先生もいたなあ。
30年やっててもこんなもの。若いキミの不安なんてアタリマエ。
佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科元教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。