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サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第17回】

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論説・コラム

「センセ暇そう」は最高のほめ言葉

 ある年の個人面談で、Kさんがご家庭での衝撃事件を語ってくれた。
「そりゃ大変やン。なんで今まで言ってくれなかったの?」
「だってぇ……センセいっつも廊下走ってるし。忙しそうだから、こんな話ししたら悪いと思って」
 大反省!ボク、優しいKさんに気を遣わせていたのか―。

 最近の職員室は、みな忙しそうだ。
 パソコンたたく音以外ご法度みたいに、だれもが画面をにらんでる。
 会話はすべてメールかLINE。同じ部屋に居ながら、ナンナンダ!
「忙しい私に話しかけないで。余計な仕事は絶対振らないで!!」
 叫ぶ背中が並んでる。

「私のことヒマだと思ってるでしょ。いえいえ、最近はウチにも細かな指示がいっぱい降ってくるのよ」
 コーヒー片手にそう語るのは、図書館司書のM先生。
「でもね、私が忙しい顔してたら、生徒たち落ち着いて本読めないじゃない」
 生徒と顔合わす前には、意識して、ひと息深呼吸するという。
 ボクら担任の、知らない情報をいっぱい持ってるM先生のところへは、今日も生徒が次々に寄ってくる。“合い言葉”みたいに、彼らが言うらしい。

「センセ暇そうだから話しに来たよ」。

佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科元教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。

サトー先生の「きょういく日めくり」