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サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第15回】

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論説・コラム

隣に並んで「どうしたん?」

「授業中だぞ、あとにしろ!」
 遅刻してきたT美さんが、授業そっちのけで友人と「オハヨー」「どうしてた?」「元気よ」とやり出したので、思わず口をはさんでしまってさあタイヘン。
「ウッセイわ!!5秒10秒も待てん上等な授業やってんのか、オノレは」
 オ、オノレって……。ハナから敵と思われたら、聞く耳持たない。入らない。
 その点、もと同僚のY先生は、こんな現代高校生の扱いがいたって上手だ。
 遅刻生徒の「オハヨー」「オハヨー」が始まると、授業をしばし中断。
 教卓に片ひじつき、ひとしきり会話が途切れたところで、
「じゃあ、もう授業進めてもいいかァ?」「あっ、センセごめん」
 おっと。あのT美さんの口から「ごめん」が出たぞ。
「今日はどうしたんや?しんどかったンか?」
「ちょっと出かけにな、ごめん、長くなるからまた聞いて。授業どこから?」
「おお、そうやっ……えーっと(一番前に座る生徒に)どこやったっけ?」
 教室中大爆笑。「今までやってたのは、な」と、遅れてきたT美さんに伝える体(てい)で復習をもう一度。実にいい雰囲気で授業が進む。
「先生の前では、ホントみんないい顔しますよね」と驚くボクに、
「いやいや、最近Tちゃんのおかあさん、病気で入院したン知ってる?」
 生徒の状況を実によく知っておられるのだ。

 生徒と一緒に床掃きしてると、いろいろ語ってもらえる。ほうき片手に「最近どうやネン?」ときくと、「うん。ちょっとNとこじれてて……」。ホンネも続出。懇談の際は正面に座らず、生徒の隣りで同じ方向を向いて。第一声は「コラッ!」でなく、「どうした?」やで。生徒のホンネ聞きたきゃ文化祭で生徒と横並びで釘打ちして見ィ……代々伝授された先輩からのワザを、今度はボクが相伝。
 
 
佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科元教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。

サトー先生の「きょういく日めくり」