令和6年通常国会質疑から【第6回】
NEWS国会では、法案審議の他に、議員の提示した課題に対して政府が見解を明らかにする質疑が行われている。今年6月23日に閉会した通常国会のうち、教育関係の一般質疑の模様を紹介していく。3月13日の衆議院文部科学委員会では、会計年度任用職員制度の導入に伴い、経験豊かなスクールカウンセラーの継続雇用が難しくなっている問題について質疑があった。
経験豊富なスクールカウンセラーの雇い止め
吉田はるみ議員(立憲) 文科大臣の所信では、令和四年度には、小中高等学校における不登校児童生徒やいじめ重大事態の発生件数、過去最多となり、小中高生の自殺者数が過去二番目となるという極めて憂慮すべき状況だというふうにおっしゃいました。そして、スクールカウンセラー等の配置充実のほか、自殺予防教育など、対策強化してまいりますというふうに大臣述べられたわけなんですが、御存じでしょうか、そのスクールカウンセラーに今、東京都では大変なことが起きています。
三月五日、先週の火曜日ですけれども、都内のスクールカウンセラーで組織する労働組合、心理職ユニオンが記者会見を行って、東京都が、都内の公立学校に配置されているスクールカウンセラー二百五十人、二百五十人を一斉解雇したということが明らかになりました。応募者数は千九十六人中、二百五十人不採用、雇い止めの率にすると二二%です。
これは、不採用となった、二百五十人かと思うかもしれないんですけれども、一人のスクールカウンセラーが週に一回学校を、大体三校程度担当していますので、今回の二百五十人の不採用というのは掛ける三で考えると七百五十校になって、その影響はとても計り知れないものがあります。
私は、このニュースを見たとき、ここは問題だなと思ったんですけれども、そもそも、そのスクールカウンセラーは一年の契約なんですね。会計年度任用職員という形態の雇用であって、更新四回まで。五回目挑戦するときはゼロベースということになるんですよ。そのゼロベースの五回目の採用試験というのが面接だけ、その前の勤務評価なし、その前の実力実証なしということで、大変な問題だ、私はちょっとばかにしているんじゃないかというふうに思ったんですけれども、この点、伺いたいと思います。
これは東京都で起きていることですけれども、全国各地のスクールカウンセラーの方々が、明日は我が身だというふうにおっしゃっています。文部科学省として、他の都道府県、実態を把握していらっしゃいますでしょうか。
初等中等教育局長 スクールカウンセラーの採用条件や任用方法につきましては、各自治体の権限と責任の下、適切に判断されるものであり、お尋ねの東京都の事案についても、東京都教育委員会の判断によるものと認識しております。
文部科学省において他の都道府県におけるスクールカウンセラーの雇い止めの問題については承知しておりませんけれども、各自治体において適切に判断されているものと考えております。
吉田はるみ議員 他の都道府県任せではなく、自殺者数が過去二番目で、いじめ、不登校、過去最多です。やはり文科省がこれはちゃんと、他の都道府県任せになるのではなく、こういうことが起きている以上、実態調査をすべきだと私は申し上げたいというふうに思います。
これはまだまだ問題がありまして、この雇い止め、実は年齢差別の疑いもあります。というのは、勤続年数別に雇い止め率を見ると、六から十年勤続、三〇・七%、十一から十五年の勤続、三二%、十六から二十年の勤続、三五・八%、二十一年以上、もう超ベテランですね、その方々は三六・二%と、きれいに勤続年数に応じて雇い止め率が高まっているわけです。この勤続年数が多いのは五十代、六十代の方なんですね。この雇い止め、三割近くになりまして、つまり、これを三年間やると、きれいにこの五十代、六十代のスクールカウンセラー、入れ替えることができるわけです。これは私はあんまりだと思います。
この雇い止めが五十代、六十代のベテランに集中している、経験と知識を本当に豊富に持っていらっしゃる、この年齢層が明らかに不採用が多いということは、これは問題ではないでしょうか。大臣、お答えください。
文科相 先ほど初等中等局長からお答えしたとおり、スクールカウンセラー等の採用条件や任用方法については、各自治体の権限と責任の下、地域の実情や能力等を踏まえ、適切に判断されるべきものであり、お尋ねの東京都の事案についても、東京都教育委員会の判断によるものと認識しております。
その上で、文部科学省としては、不登校児童生徒が増加するなど、学校や教師が直面する課題が多様化、複雑化する中にあって、教師とは異なる専門性を有するスクールカウンセラーなどが果たす役割は重要であると考えております。職務の遂行上必要となる専門性を考慮するなどして、十分な能力を持った者を任用することが大切だと考えております。
引き続き、学校における教育相談体制の構築のため、必要な支援の充実に努めてまいる考えです。
吉田はるみ議員 大臣、ありがとうございます。専門性を考慮するというところの御答弁をいただけたのは、大変心強い。
やはり、こういう専門性のある仕事の方が、経験と知識を積み上げて、本当に子供たちに向き合うことができるようになったときに切られてしまうとなったら、この仕事を目指す方々は減ります。そして、スクールカウンセラーの質も向上できないのではないかと私は思うんですね。
そこで、一つ総務省に伺います。
総務省が二〇二三年に出した会計年度任用職員制度の適切な運用等に関して、これは通知ですけれども、前年度に同一の職務内容の職に任用されていた者について、客観的な能力の実証の一要因として、前の任期における勤務実態を考慮して選考を行うことは可能であるというふうに明記されています。
でも、今回の東京都のスクールカウンセラー大量雇い止めは、面接のみで採用の可否が判断されているものであって、客観的な能力の実証、これはできていないわけです。これは、この通知に反する、不適切ではないでしょうか。短くお答えください。
総務省自治行政局公務員部長 会計年度任用職員の採用の方法につきましては、競争試験又は選考によることとされておりまして、選考による方法としては、面接や書類選考等による適宜の能力実証の方法によることができるとされております。
また、採用における能力実証につきましては、各自治体において適切に実施されるべきものであり、御指摘の通知は、再度の任用を想定する場合の能力実証に当たって、客観的な能力実証を行うための判断要素の一つとして前の任期における勤務実績を考慮することも可能であることを示したものであり、能力実証の具体的な手法について一律の対応を求めているものではありません。
このため、一般論ではありますが、採用の方法が面接のみであることのみをもって能力実証として不適切であるとは言えないものと考えております。
吉田はるみ議員 じゃ、面接だけでもいいというふうな理解ですか。
総務省自治行政局公務員部長 面接のみであっても構いません、構わないと、あくまでも一般論としてでございますが、面接のみで行うことをもって能力実証として不適切であるとは言えないと考えております。
吉田はるみ議員 いや、ちょっと私、びっくりしちゃったなと思います。
じゃ、面接のみで可能であるということが今言われたわけですが、ちょっとこれに関してもう少し、今度は文科大臣に伺いたいんですけれども、この面接の中で圧迫面接がどうもあったと。人によって、聞かれる面接の質問の項目が違うんですよ。
確かに、面接の中で、この人は能力があるということを調査しようということになって、それももちろんできると思います、その一つとして。でも、面接官によって、何かすごいことをいろいろ聞かれているんですよ。もし教員が性加害しているのを知ったらどうしますか、管理職が性加害をしていたら、校長が性加害をしていたら、こういうふうに畳みかけるような質問をされる方もいる一方、全くこんな質問をされない人もいたと。
こういう、面接の中で質問項目が違うのは、これは不適切じゃないですか。
文科相 繰り返しになりますけれども、スクールカウンセラー等の採用条件や任用方法については、各自治体の権限と責任の下、地域の実情や能力等を踏まえ、適切に判断されるべきものと考えます。
そして、お尋ねの東京都の事案につきましても、東京都教育委員会の判断によるものと認識しておりますので、その具体の判断について、今委員がおっしゃったようなことがあったのかどうかを含めて、コメントすることは差し控えさせていただきたいと考えます。
吉田はるみ議員 自治体の方に任せているといって、今度、都議会の方で東京都の教育委員会とかに聞くと、いや、それはもう国だからと。こうやって、もう責任を、あっちこっちあっちこっちになって、じゃ、誰がこれに関して判断するのって思いますよ。これは私は不適切だと思います。
何か、余り逃げの姿勢ではなくて、本当に、スクールカウンセラーというのは、子供たちの心のケアや保護者、そして、今、利用する中には教師の方も多くいらっしゃいます。三分の一ぐらい教師の方です。こういうとても大事な仕事なわけですよ。これは私、もっと真剣に捉えていただきたいなというふうに思います。
具体的に、こういうのはどうですかというのをちょっと提案します。
貧困やDVなど困難な問題を抱える女性を支援する婦人相談員に関して、令和元年六月十四日、厚生労働省の子ども家庭局家庭福祉課長から各都道府県民生主管部部長宛てに通達が出されました。その通達の内容は、ちょっと全部読もうかと思ったんですけれども、時間がないのでやめます。内容は、きちんと能力実証をして、ちゃんとその人に能力があるか、それを確かめて、その人の仕事をするに十分な能力を持っているというふうに分かった人は、契約期間にとらわれず再度雇用しましょうねということをこの婦人相談員に関しては言っています。やはり、会計年度任用職員ということの大変難しさだと思うんですけれども、一律、契約だからと、能力のある人をばっさり切ったりしないようにねという通達なんですが、これは、盛山大臣、今回のスクールカウンセラーにも私は適用すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
文科相 不登校児童生徒の今の現状ですとか学校や教師が直面する課題が多様化、複雑する中にありまして、教師とは異なる専門性を有するスクールカウンセラー等が果たす役割は大変重要でございます。職務の遂行上必要となる専門性を考慮するなどして、十分な能力を持った者を任用することが大切だと考えております。
しかしながら、繰り返しになりますけれども、スクールカウンセラーの採用条件や任用方法については、各自治体の責任と権限の下、適切に判断されるもの、その権限の問題としてそういうふうになっているものでございますから、各教育委員会等に対して、様々な、悩みを抱える課題等に対して適切な対応がなされるような体制整備に努めていただきたいというふうにこれからも対応していきたいと考えております。
吉田はるみ議員 大臣、任用方法ではなくて、今回、婦人相談員に通達を出しているのは厚労省なんですよ。今回、スクールカウンセラー、こういう雇用形態というものに対して、今、現場が非常に混乱しているわけですから、文科省から通達を出していただけませんかというシンプルな質問です。イエスかノーかだけでお答えください。是非出してください。
文科相 我々文部科学省では、令和二年に、会計年度任用職員の任用について、再度の任用の際、客観的な能力実証の一要素として前の任期における勤務実態を考慮して選考を行い、再度の任用を行うことは可能である旨を記載した事務処理マニュアルを各教育委員会等に対して周知しております。この取扱いはスクールカウンセラーの任用にも当てはまります。各教育委員会等に対しては、これらの運用マニュアルを踏まえつつ適切に制度を運用することについて引き続き周知を、周知に努めてまいります。
吉田はるみ議員 周知というところを強調されたわけですけれども、盛山大臣、やはり、ああ、やはり盛山大臣でよかったなと皆さんに思っていただくには、やはり人ができないことに是非踏み込んでいただきたいんですよ、本当に。ええっ、やったぞという、やはり盛山大臣に声が届いたな、そういうのを是非御期待申し上げます。
ちょっと時間が迫ってきたんですけれども、ちょっとこれだけ最後、スクールカウンセラーに関しては申し上げたいなというふうに思います。
これは結構知らない実態なんですけれども、東京都の場合は、都の採用、それから、都の採用だけで週一では間に合わずに、区の採用になっているスクールカウンセラーもいらっしゃるんですね。同じ週に、一日は都の採用のカウンセラー、次の人は区の採用のカウンセラーというふうになっていて、待遇は三分の一ですって、区の採用ですと。
今回、都のスクールカウンセラーで不採用になった方が、今度は区のカウンセラーという形で応募される方もいらっしゃるんですけれども、こういう、やはり、雇用形態が違って、かつ、こんなにも待遇に差があるというスクールカウンセラーがいるというこの実態を、大臣、是非考えていただきたい。これは文科省の責任だと思います。やる仕事は一緒ですよ、待遇が変わっても。当たり前ですけれども、本当にガラスのような子供たちの心のケアをしていく、とても大事な仕事ですので、是非この点は、いやあ、さすが盛山大臣、あのときの声が届いたわということを是非お願いしたいなというふうに思います。ありがとうございます。