サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へいくために~【第9回】
NEWS「肯定」から入る
自称「ディベート名人」のKくんだが、教員間では「へ理屈K」として有名。
「やっぱ世の中、結局はカネやね」
「力のある者に従うことをしっかり教えるのが学校の役割だよ」
とかくカンに障ることを言う。挑発する。こっち(教員)が血相変えて否定するのを、まるで見越して楽しんでいるかのよう。
「……そう、そこなンや。その点はボクも矛盾やと思ってたんやなー」
おっと珍しい。そんな教員泣かせのKくん、O先生の前ではなぜか素直だ。
なぜ?と思い、しばらくO先生とKくんの会話をウオッチして気づいた!
「ふーん確かに。今の若いモンはそう思うのかぁ。なるほど。待てよ、それだと、〇〇が起こってしまう可能性もあるんじゃないか」
O先生の応答は必ず「確かに」で始まっている。決してKくんの“へ理屈”をアタマから否定しない。まず認め、そのうえで、懸念点を問いかける。
「Kくんは賢いから。本当は、自説の不十分点を一番わかっているのはKくん自身だから」
自分の口から本心が素直に出る環境をつくる。と言うか、「一致点」を見つけ、「不十分」の克服をKくんと一緒に探っている。
横でやりとりを聞いてたM先生のつぶやきに同意。
「O先生って、K君と同じ方向向いて考えておられるよなあ」
佐藤功(さとう・いさお)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「国内旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。