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サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために【第8回】

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論説・コラム

子どもの前ではみんないい人

 かつて大阪に教育関係の条例をつくろう、と一部の政治家さんたちが言いはじめたとき、高校生Aくんが怒ってた。
「わけわからん。これから一番影響受けるのはぼくらやん。なのにまったく何の説明もない。教室に来て説明せえって言うネン」

 ごもっとも。ならばということで、条例提案側の政治家さん(賛成派)と現場教員(反対派)双方呼んで、高校生たちに語るイベントを企画した。
「子どもたちの前で大人たちが大げんかしませんか?」と、心配の声多数。
「大丈夫です。だって、子どもの前ではみ~んないい人、ですから」

 当日、大勢のギャラリーが見守るなか、政治家も教員も、皆がていねいに、高校生たちにわかるコトバを駆使して語りあった。高校生が首をかしげると、政治家さんもコトバを入れ替え、例え話を探して説明する。他のパネラーたちが必死に補足し、そこに賛成派、反対派の区別はない。常日頃あれほど、自分たちの「身内」相手に「敵」批判を繰り返している方々が、だ。

 わからないことだらけで悪戦苦闘しながらも、一生懸命に話をきく高校生の姿にオトナが触発された。「『この人は○○党だからいい、悪い』と党別で語るような発言や『敵』を叩きのめそうとする発言はお控えください」「この場には次代を担う高校生たちも参加しています。彼らにわかる言葉で発言ください」など、いくつかのグラウンドルールをつくり、その後も同意いただいた方々と、大阪の教育の明日について語り合えている。

「人には「いい人」と「悪い人」がいるんじゃなく、どの人にも「いい部分」と「悪い部分」があるんだよねー」
 参加していた女性がぼそっと言った。顔じゅう「?」マークいっぱいでも懸命な子どもたちの存在が、人の「いい部分」をいっぱい出させてくれる。

佐藤功(さとう・いさお)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「国内旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。

サトー先生の「きょういく日めくり」