サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第5回】
NEWS必ず10年後に「ありがとう」って言うから
今すぐ効果が出なくても、やがてじわじわ効くのが「教育」ってもので―。
生徒たちに「説教」したとき、彼らからよくこう返される。
「そんなことだれがわかるネン。ほっといてくれ」
確かにそのとおりだ。将来どうなるかなんてだぁれもわからない。
しかし、長く教員生活を重ねた今なら、にっこり笑って言い返せます。
「ゼッタイぼくに感謝するんだから。今はそんなこと言ってるけど、10年後には『あのとき言いにくいこと言ってくれてありがとう』って」
実は根拠があるんです。長く教員やってると、同窓会のとき、卒業していった元高校生(=先輩)たちがときどきこう言う。
「あのとき、先生の言うことはゼッタイ違うと思ってた。けど、いまは確かにそうだったって、実感してます」。そして彼はさらに続ける。
「言いにくいことをしっかり言ってくれて、本当にありがとうございました」
自分でも薄々気づいてたのですが……と、アタマかきながら。
「10年後によかれと思うこと」は、たとえそのとき嫌われたとしても勇気を出して言う。そうでなければ、いっそ言わない―ボクなりの「言う・言わない基準」だ。先輩たちの“実績”が、ボクにとっての“自信”となっている。
「今はわからなくていいんだよ。10年後のキミはきっとね、ウフフ……」
不思議な微笑みは、たいてい「気色悪ぅ」と言われるんだけど。
佐藤功(さとう・いさお)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「国内旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。