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交通安全への強い眼差しー交通遺児育英会の使命ー【第6回】

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論説・コラム

「海外語学研修」

 交通遺児の高校奨学生の皆さんを対象として毎年30名前後を選抜して語学研修に派遣しています。
 派遣先はこの研修がスタートした2004年(平成16年)から2012年までの9年間はイギリスのソールズベリーでした。2013年以降はアメリカのカリフォルニアに移り、2019年まではオレンジ郡、2023年はリバーサイド郡でした(2020~2022の3年間はコロナで中断)。

 研修の意味については次のように考えています。
 これから世に出て行く奨学生にとっては、世界の人々と共通の言語でコミュニケートできることはますます重要となっています。ビジネスや学問の世界は当然のことですが、もっと基本的には、世界平和のために共通言語でのコミュニケートは欠くべからざるものです。
 世界のあちこちで様々な理由による紛争が絶えません。お互いのコミュニケートが不足していることにより、お互いの文化に対する認識が不足し、それに敬意を払い、尊重する心に欠けるところが原因の一つであると思います。
 このような研修は、外国の人とじかに接触し、その文化を知ることとその文化から刺激を受けること、それによって研修生の心にインターナショナルなマインドを醸成します。
 彼等が、将来、どこでどのような生活をしていようと、広い世界を考え尊重する心を持ち、ひいては国際交流や世界平和への貢献を、彼等の思考回路のどこかに組み込むことを手助けしているはずです。
 帰国した研修生と会って、話して感じることですが、当初目的とした英会話力の向上、異文化体験による世界観の拡がりもさることながら、奨学生が勇気ある決断で自分が決めた目標を達成し、大きな自信を得たことがこの研修の一番の収穫でした。
 また、研修の3週間を乗り切るのに一緒に行った仲間との友情が力となります。苦楽を共にした仲間との友情は研修後も長く続いているようで、これも望外の収穫です。

 研修生には研修レポートを書いてもらいます。純な気持ちが表れている部分をピックアップしてみます。これがこの語学研修の意味をよく伝えてくれていると思います。

 ・苦手な英語も、気持ちがあれば伝わるということを教えてもらった気がします。とてもうれしいです。(M.M)
 ・素晴らしい体験ができてとても感激しています!!英語を学習する意欲が今よりさらにわきました。レベルアップしてまた戻ってきたいです。(T.A)
 ・もともと英語が好きだったのでイギリスでの生活はとても楽しいものになりました。外国人の友達もたくさんできて、育英会に参加していなかったら出来なかったような経験ができました。日本に帰ったら今よりもたくさん勉強して、またイギリスに行きたいです。(M.U)
 ・素敵な仲間と受ける授業や午後のアクティビティー、優しくて温かいホストファミリーと過ごす団らんの時間や休日。日本ではなかなか行くことのない海やハイキング。憧れていたディズニーランドに連れて行ってもらったりと毎日が充実していました。(Y.U)
 ・3週間で多くのことを学び、自分自身も成長できました。1週間目は、正直友達はできるか、ホストファミリーとうまく話せるかなど不安がいっぱいでした。しかし2週間、3週間と過ごすうちに、不安は消え、毎日楽しく、帰りたくない!とまで思うようになっていました。(Y.S)
 ・この研修に参加することができて本当に良かったと思います。まず、私の英語がどれだけ通じないかが分かりました。これはテストの結果ではわからない自分の欠点です。実際にアメリカに行き、英語を聞いたり話したりすることで、伝えたいことが伝えられなかったり、聞いても相手が何を伝えたいのかが全然わかりませんでした。3週間過ごすことで日本とは違う文化をたくさん知ることができました。高校1年でこの研修に参加できたことを本当に良かったと思いました。(H.Y)

 これまで6回にわたり公益財団法人交通遺児育英会の事業を紹介させていただきました。
 今後も絶えず奨学生、保護者の声に耳を傾けながら、理事、評議員の方々と議論を重ねつつ、修学支援のさらなる充実に取り組んでまいります。これからも変わらぬご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

石橋健一(いしばし けんいち)
公益財団法人 交通遺児育英会 会長
1942年生まれ。北海道大工学部卒業後、日新製鋼入社。呉製鉄所エネルギー技術課、本社人事部などを経て、1996年交通遺児育英会出向。事務局長、専務理事、理事長を歴任し2023年6月より現職。

交通安全への強い眼差しー交通遺児育英会の使命ー