日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

令和6年通常国会質疑から【第6回】

NEWS

行財政

 国会では、法案審議の他に、議員の提示した課題に対して政府が見解を明らかにする質疑が行われている。今年6月23日に閉会した通常国会のうち、教育関係の一般質疑の模様を紹介していく。3月22日の参議院文教科学委員会では、教育格差について教員養成課程や教員研修で扱うことを求める質疑があった。

生まれながらの格差はなくさねば

 伊藤孝恵議員(国民) 一人一台端末の利用についても著しい地域間格差が露呈をいたしました。デジタル教育の環境整備を市区町村任せにしたことが原因であるということは否めませんけれども、この端末導入の目的である個々人の学習データを生かせているという自治体は本当にごく僅かであります。
 例えば、今、毎日学習で端末を使うのは、トップが山口県、八七%だそうです。そして、ワーストが岩手県、三九・八%。岩手は山口の半分以下ということになります。ここは、自治体間におけるデジタル教育に対する熱量の格差もあるというふうに思いますし、教員のITリテラシーの格差もあり、それを埋めていくために、今回、予算においてもおよそ四十億円ものDX関連予算が組まれております。
 これ、格差があることを可視化して認識をして、必要な手当てをしていく、これ当たり前のことだというふうに思います。この当たり前の手当てが教育現場の子供たちの教育格差、こういったはね返し難い部分に介入や援助がなされてしかるべきなのに、その根本、それが社会の共通認識になっていないのではという問題認識で質問させていただきます。
 もちろん、社会の中にはありとあらゆる格差があります。競争による格差というのは全否定するものではありませんけれども、生まれながらの格差というのは、これはなくさなければなりません。教育格差はその最たるものでありまして、いわゆる親の社会経済的地位の違いなどによって子供の学力や教育機会、学校外教育活動の参加率には埋め難い差が生じるという問題については度々警鐘が鳴らされています。
 これらを教職課程や教員研修で取り扱う必要があるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

教委職員対象に研修

 盛山正仁文科相 文部科学省としましては、今委員が御指摘の教育格差も含めまして、現場の状況やニーズを的確に把握し、効果的な政策立案を行うことが重要であると考えております。研修として職員を学校現場に派遣してその実態を把握させる、その他いろいろやっているところでございますが、この教育の格差を始め、学校現場が直面する課題に対して検討をしていくことは今後とも大変重要な課題であると思います。
 それで、昨年七月、その有識者会議の報告書におきましては、現代的な教育課題への対応等に係る専門性の向上に向けた研修の実施を各地方公共団体に対して求めております。それから、昨年の九月には、文部科学省主催で全国の教育委員会担当職員を対象とした研修会も実施しているところでございますが、引き続き、その学校現場を取り巻く諸課題に対してしっかり対応することができるよう、我々としても対応の充実に努めてまいりたいと考えます。

体系的プログラムが必要では

 伊藤孝恵議員 実際、二〇一七年度の教職課程のシラバス研究では、格差が出てくるのはおよそ三割だそうです。子供の貧困に言及している科目数は、全体の二割にとどまっています。階層や格差を扱う教育社会学の講座よりも、教育学部の中では具体的な授業実践の方法論などが好まれるそうです。
 先般、私は、龍谷大学の松岡亮二先生の「教育格差―階層・地域・学歴」という本を読んで、大変考えさせられました。これ、出身家庭と地域という本人にはどうしようもない初期条件によって子供の最終学歴が異なり、それは収入、職業、健康など様々な格差の基盤となる、つまり、日本は生まれで人生の選択肢、可能性が制限される緩やかな身分社会だとの指摘であります。
 また、どのような人が大学で教員免許を取得し、教師として採用されてきたのか、そんな基本的な問いに答えるデータもないまま日本の教員政策は議論されてきたという問題提起もされておりましたが、文科省の委託を受けて令和四年に報告をされた全国教員調査というものが出ました。これ全部拝見しましたけれども、父母が教師だと本人も教師になる世代間職業再生産の傾向が強いそうです。それから、学級委員とか生徒会とか部活の役員などの経験者も多くて、さらには、中学三年生時に大学進学意向がおよそ八割から九割。こういった生まれを背景に、学校教育と親和性のある方が再び教師になって学校に戻ってくる。頑張ればできるみたいな体験の成功者が多いという内容でありました。
 今、今日、いっぱい先生がこの室内にいらっしゃいますのでなかなか言いにくいですけれども、自身の体験だけではカバーできないことが大変あるということです。
 私も実は教員免許を持っておりまして、大学のときに教員免許を取得いたしました。そして、教育実習は母校に行ってしまったんです。母校じゃやっぱり駄目なんです。自分とは全く違うところに体験に行かなきゃ駄目なのに、私は母校に行ってしまった。実際に、こういった全く違うところに教育実習に行く先生は今一〇%台なんだそうです。
 ですから、大臣にお伺いしたいのは、研修や教職課程、そして教育実習でこういった生まれながらの格差というのを体系的に学べる、そういうプログラムが要るんではないですかという問いです。最後、御答弁お願いします。

充実した対応図る

 盛山正仁文科相 教師を目指す方だけでなく、我々広く関係者が今先生御指摘の教育格差について正しく理解をしていくこと、これが重要であると思っております。
 そして、今先生の教職課程においてということでございますが、現在でも、教育に関する社会的、制度的又は経営的事項に関する科目や特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解に関する科目などで教育格差に関する内容について取り扱っているとは考えております。
 また、採用後においてもその教育格差、その他教員の資質向上について研修その他が行われているところだと思いますが、このような教育格差というものについて学ぶ機会をつくる必要があるというのは先生の御指摘のとおりでございますので、我々文部科学省としましても、今申しましたような教職あるいは研修、そういったことだけではなく、幅広くその効果的な対応をどのようにすることができるのか、研修機会だけではありませんが、充実した対応を図っていきたいと考えます。

令和6年通常国会質疑から