日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

令和5年 通常国会質疑から【第10回】

NEWS

行財政

 6月に閉会した通常国会では、予算案・法案審議の他にどのような質疑があったか。衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会などでは、まだ、あまり明らかになっていない政府の考え方などが見えてくる。6月2日の衆議院文部科学委員会では、公明党の山崎正恭氏が、公立学校教員の定年年齢引き上げについて質問。段階的引き上げに伴い2年に1度、定年を迎える教員がゼロとなることから、新規採用教員の増減を平準化するよう求めた。教員不足問題への影響にも触れている。

退職者減る年の採用者数維持の決意は

 山崎正恭議員 令和五年度末から始まる定年の引上げ、二年に一度、一歳ずつ、六十五歳まで段階的に引き上げられていくんですけれども、これへの計画的な対応が重要として、定年が引き上げられる年度においては退職者数が減少することになりますが、年度によって新規採用数を大きく増減することなく、安定的に新規採用数を確保することが重要で、退職者枠とは別に、これまで臨時講師等の非正規教員に活用している枠を正規教員に置き換える等、正規教員の採用枠を拡大する取組、非正規教員の割合抑制を進めるべきと示されています。
 これに関しては、今回の採用試験の在り方だけでなく、現在の日本の教育の最重要課題とも言える深刻な教員不足問題の肝にもなってくる問題であるというふうに思います。
 教員不足の問題については様々な議論がなされていますが、その中で私が本質だと思うのは、年度初め、四月一日現在の教員配置、この段階で正規教員の人数が圧倒的に足りない状況が起きて、実はこの段階で各都道府県に登録されている臨時教員の先生が配置し切ってしまっていまして、四月以降に起きてくる育休、産休、病休に入ってもらう臨時教員がいない、臨時教員がもう既に四月で枯渇してしまっているという状況が起きています。
 結局、その分は、前回のときにも言いましたけれども、校長先生が退職者に何十人、何百人も電話して本当にやっていただいたり、若しくは教頭が担任に入る、ひどい場合には、小さい学校では、突然の休みの場合は校長先生も入って対応していると伺っていますが、要は、その職場の先生方が、本来の自分の職務以上に、欠員となった教員配置分の仕事を担ってくれています。そのときにも、その代わりが正規教員にしか担えないものが多く、正規教員の負担が急増しパンクしてしまうという負のスパイラルも起きています。
 二〇〇一年の義務標準法の改正や二〇〇四年の義務教育国庫負担制度を導入する改革によって、教職員給与費の総額範囲内であれば教員の数、給与、待遇を地方自治体が定められるようになりました。しかし、その後、教員を正規雇用するための基礎定数はほとんど増加されず、増やされたのは単年度しか予算が保障されない加配教員定数が中心であったなど、様々な要因によりまして、令和四年の現状を見ると、教員定数に占める正規教員の割合は、全国平均で九二%、一番少ない沖縄県では八一・二%になっています。ただし、これは、先ほど言った加配教員定数は含まれていませんので、基礎定数に対する割合ですので、教育現場の実態でいうと、これ以上に非正規教員の割合が高いのが実情です。
 そこで、こういった状況の中、今回の方向性の掲示の中で、定年が引き上げられる年度において退職者数が減少しても、新規採用数を大きく増減させず、安定的に新規採用数を確保する、正規教員の採用枠を拡大する取組、非正規教員の割合抑制を図る取組というのは、現在の教員不足の現状を考えても非常に重要なことでありますが、この取組への決意と方向性についてお伺いいたします。

「非正規」の置き換えを

 文科相 定年引上げの影響につきましては、地域ごとに教師の年齢構成は様々であるものの、定年を引き上げる年度におきましては退職者数が減少することから、新規の教員採用につきまして計画的な対応が必要になる、そう考えております。
 このため、五月三十一日の方向性の提示においては、各年度の新規採用数を平準化することに加えまして、各教育委員会の実情に応じて、退職者分の枠とは別に、これまで臨時講師等の非正規教員に活用している枠を減らして正規教員に置き換えることなどによりまして、正規教員の採用枠を拡大をし、非正規教員の割合を抑制していくことを要請をしたわけでございます。
 このことは、現在の教師不足が、産休、育休取得者の急増ですとか、特別支援学級の見込み以上の増加などによる臨時講師等の需要増加に対する供給不足が主な要因であることを考えれば、中長期的に質の高い指導体制を構築していくことにもつながるという重要な取組と考えております。
 文部科学省といたしましては、今後とも、各教育委員会におきまして、中長期的な採用計画の中で、目標とする正規教員の割合などを設定をしていただいて、その目標に向かって積極的に正規教員の採用を進めていただきたい、そう考えております。

令和5年 通常国会質疑から