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全国SLA通信 新しい教育を拓く学校図書館【第7回】

5面記事

関連団体・組織

学校図書館法公布70周年
これからの学校図書館に望むこと

第五次「基本的な計画」
 三月に文科省から新たな「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が示された。そこには子どもの読書活動の現状とこれに対する取り組みの方向が示されている。
 現状としては、「文字・活字離れ」から「読書量の二極化」への変化と、教育におけるデジタル化への進展が注目される。そして、これに対応する方針として

 (1) 不読率の低減
 (2) 多様な子どもたちの読書機会の確保
 (3) デジタル社会に対応した読書環境の整備
 (4) 子どもの視点に立った読書活動の推進

 ―を挙げている。
 これらの方針を踏まえ、国や都道府県、市区町村の読書活動の推進体制を整えるよう求めると共に、家庭や学校、地域の取り組みについて具体的な方策を示している。
 さて、新型コロナウイルス感染症の蔓延をきっかけに企業ではテレワークが、大学では遠隔授業が広がった。学校においてもタブレット端末の全員配布などGIGAスクール構想に基づいた対応が進み、特にAIへの今後の対応が大きな課題となっている。
 学校教育に関してはプログラミング学習やタブレット端末を活用した学習の推進とネットモラルの指導、教科書のデジタル化への対応、AIの進化に伴う文書生成ソフト(チャットGPT等)使用の可否、などが当面の大きな課題となる。そこで気になるのが、今後の学校図書館の在り方である。

「紙」と「デジタル」双方の良さを生かして
 今回示された「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」においても、学習時におけるデジタル機器の活用は「最先端、万能」という位置づけである。短時間の簡便な操作で正確な回答にたどり着くことができる。多少の課題はあるが、技術の進歩により、近い将来に解決すると匂わせる。
 一方「活字の学びを考える懇談会」の「いま、なぜ『紙』の教科書なのか」(2022.9)では、学びに関して「紙」の「デジタル」に対する優位性を示し、デジタル優先という方向性に疑問を投げかける。拡大を続けていた電子書籍の刊行にも陰りが見え始めたという。
 タブレット端末の導入をきっかけに「学校図書館は不要になるのではないか」と心配する声も聞かれる。しかしそれは杞憂である。
 学校図書館は元来、学び方を学び実践する場所である。まず為すべきことは「紙」と「デジタル」双方の適性を見極め、それぞれの資料の充実を図ることである。また、全教職員が学校図書館の価値と活用法を組織として理解し実践するよう努めるべきである。そうすることで学校の教育力は高まる。その一方で児童生徒の「気づく、考える」環境を作っていくことが大切である。そのための「考える授業」を支える学校図書館づくりを何よりも期待したい。
(元東京都公立小学校長・磯部延之)

INFO
「学校図書館法」を知ろう

 学校図書館の設置の義務づけは、1947年教育基本法の成立にさかのぼります。学校教育法により設置が義務付けられ、同年には文科省(当時)が「学校図書館の手引き」を刊行し、全ての学校に配布しました。その伝達の必要性の流れの中で、全国学校図書館協議会(全国SLA)が1950年に結成され、92万を超える署名(写真)を集め、超党派の議員たちによる議員立法で1953年に「学校図書館法」が成立しました。
 子どもたちの学ぶ権利を守るための法律です。多くの教育関係者の思いが結集された「学校図書館法」の内容を、改めて読み解くと、70年前に、現在の学習指導要領が求めている「自ら学ぶことの大切さ」にすでに触れて、その実現のために考え抜かれた法律であることに驚かされます。

<学校図書館法(1953年8月8日公布)>より抜粋

(この法律の目的)
 第一条 この法律は、学校図書館が、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であることにかんがみ、その健全な発達を図り、もつて学校教育を充実することを目的とする。

(定義)
 第二条 この法律において「学校図書館」とは、学校において、図書、視覚聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料(以下「図書館資料」という。)を収集し、整理し、及び保存し、これを児童又は生徒及び教員の利用に供することによつて、学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童又は生徒の健全な教養を育成することを目的として設けられる学校の設備をいう。

(設置義務)
 第三条 学校には、学校図書館を設けなければならない。

問い合わせ
 公益社団法人全国学校図書館協議会
 〒112-0003東京都文京区春日2-2-7
 Tel=03―3814―4317
 FAX=03―5804―7546

※本稿の記事は「学校図書館」「学校図書館速報版」に掲載したものが含まれます。

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