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教育現場におけるSNSのマナーとリスクマネジメント【第11回】

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論説・コラム

子どもに迷惑行為をさせない・迷惑動画を投稿させないために

 過去にも何度かありましたが、今年に入ってから社会問題化したのが「迷惑行為動画(迷惑動画)」です。1月に回転寿司店で客が他の客が頼んだ寿司にいたずらする動画がSNSに投稿されて炎上したのを皮切りに、主に10代・20代の若者による迷惑行為、および、それを撮影した動画の拡散と炎上が続きました。なぜ子どもたちは迷惑行為をしてしまうのか・動画をなぜSNS投稿してしまうのか、そして「迷惑動画」について子供たちにぜひ伝えていただきたい内容を解説します。

今も増え続けている「迷惑動画」

 最近でこそ、ニュース等であまり見かけなくなりましたが、「迷惑動画」は完全になくなったわけではありません。「迷惑動画」や「迷惑行為」でインターネット検索すると、最近SNSにアップロードされた動画、炎上した動画が次々と表示されます。
 かつては「バカッター」騒動とも呼ばれたように、Twitterに迷惑行為動画を投稿するケースが比較的多かったのですが、最近はTwitterに加えて、10代の利用が多いInstagramやTikTokに投稿するケースが目立つようです。
 その多くは、「仲間の受け狙い」が目的と考えられます。動画に映る行為者は、それが「やってはいけない行為(マナー違反、犯罪など)」だとわかっていながら、時には「自分にとって何の利益も快さもない行為(醤油差しをなめる・公衆の前で服を脱ぐ など)」に及ぶこともあるのです。

迷惑動画がなくならない理由

 過去何度も話題になり社会問題化しているのに、なぜ迷惑動画はなくならないのでしょうか。以下に挙げるように理由はいくつか考えられますが、まとめると子供たちの「知識不足」「認識不足」と言えるでしょう。

 ・ニュース等を見ないため、迷惑動画が炎上し社会問題化していることを知らない
 ・仲間内だけの共有のつもりで、まさかSNSで広く拡散されるとは思っていない
 ・自分の行為が犯罪に問われると思っていない(「謝れば許される」と思っている)

 先生方、保護者のみなさまには、「迷惑動画」がなぜいけないのかを子どもたちに繰り返しご指導いただきたいと思います。

「迷惑動画」について伝えていただきたいこと

 子どもたちに伝えていただきたいことを3点、以下にご説明します。

◆「迷惑行為」は、「いたずら・悪ふざけ」ではなく「犯罪」です

・謝れば許されるわけではなく、以下のような罪に問われる場合があります。犯罪者となれば、社会的制裁を受けたり賠償金を用意したりと大変な人生が待ち受けていることを知っておきましょう。
(例)
 ・お店の営業を妨害 → 「偽計/威力業務妨害罪」の可能性
 ・お醤油ボトルや食材を廃棄させた → 「器物損壊罪」の可能性
 ・他人が注文した料理を食べた → 「窃盗罪」の可能性

・今年に入って、被害を受けた企業側が毅然とした対応をとる傾向が強まりました。実際に、威力業務妨害で書類送検されたケースや、被害を受けた店舗から損害賠償を請求されたケースが存在します。

 行為者は「ほんのいたずら」だったとして後から謝罪するケースも多いのですが、その謝罪を拒絶する企業も増えています。「食の安全性」を脅かし、国内のお客だけでなく海外からの観光客をも失いかねない悪質な行為に対して生ぬるい対応では、また模倣犯が出てしまう懸念もあるのでしょう。また最近はそんな企業姿勢を支持し、応援する人が増えていることも影響しているようです。

◆「自分を大切にしよう」

・「仲間に受けたい」と軽はずみにおこなった行為は、仲間内にとどまることなく、あっという間に全世界に広まってしまいます。鍵付きアカウントやストーリーズ(24時間経つと消えるタイプのSNS投稿)での投稿でも、誰かの手によって動画が保存され全世界に向けて投稿されてしまうケースは後を絶ちません。
・「有名になりたい」ために迷惑行為を行いSNS投稿すべきではありません。たとえ犯罪者として有名になっても、デジタル・タトゥーが付いて回り一生を棒に振る可能性が高いのです。
・自分はしたくないのに、先輩や仲間から迷惑行為をするよう命令されたりそそのかされたりすることもあるでしょう。「1回だけなら」という甘い気持ちは危険です。一生を台無しにしないためにも、「勇気をもって」断わるか、逃げましょう。

◆「迷惑行為は、撮らずに止めよう」

 迷惑行為を「する側」ではなく、迷惑行為を「目にする側・撮影する側」に回ることもあるでしょう。迷惑動画の多くには行為者と別の「撮影者」が存在し、迷惑行為を指示・命令したり、撮りながら笑ったり、さらには動画をSNSに投稿したりするケースが多く、行為者と同罪といっても過言ではありません。以下を心がけるようにしましょう。

 ・迷惑行為を自分でしない、誰かにやらせない
 ・友だちや先輩後輩が迷惑行為をしようとしたら止める
 ・知らない人が迷惑行為をしているのを見かけたら、すぐにお店の人・駅係員・警備員・警察官に伝える

 世間が忘れかけた頃に復活する「迷惑動画」。子どもたちが迷惑行為をしたりそれを動画撮影してSNS投稿したりすることのないよう、子どもにとって退屈な梅雨・気持ちが浮つく夏が始まる前に、ぜひご指導をお願いします。

教育現場におけるSNSのマナーとリスクマネジメント