全国SLA通信 新しい教育を拓く学校図書館【第6回】
4面記事学校の実態に合った蔵書構成を!
コレクション構成を考えましょう
1.コレクションをデザインする
コレクション構築(「コレクション形成」、「蔵書構成」ともいう)とは、『図書館情報学用語事典 第5版』(丸善出版)では、“図書館蔵書が図書館のサービス目的を実現する構造となるように、資料を選択、収集して、計画的組織的に蔵書を形成、維持発展させていく意図的なプロセス”と定義されています。
しかしこうした概念だけでは、その中身は理解しづらいものです。より簡単に表せば、図書館に存在するコレクション(資料群)を、各館のニーズや実態などの状況等に合わせ「デザインする」ことと言えるでしょう。
2.各種メディアの構成について
本稿では主に図書を中心に解説します。日本の学校図書館では、図書の構成を図る際によく用いられるのが「蔵書冊数」と「蔵書比率」に関する指標があります。
「蔵書冊数」については、国の「学校図書館図書標準」があります。各学校の学級数に応じて、整備すべき目標冊数が定められています。遵守する義務はありませんが、まずはこうした数値を参考に、自館の図書の整備を図っていくとよいでしょう。
また「蔵書比率」については、全国SLAが策定している「学校図書館メディア基準」の中に示されている「標準配分比率」が、一般的によく用いられています。(下表)
0~9類までのNDC分類ごとに、各館が備えるべき蔵書の標準比が示されています。
ただし、これは現場でよくあることなのですが、担当者が教育委員会等からこの比率を提示され、今後の自館の蔵書構成を何が何でもこの比率に合わせなければならないといった考えを抱くケースもよく耳にします。
しかしこの比率は、あくまでも一つの望ましい案としての位置づけです。
本来、学校図書館は各地域の特性や、各学校の児童生徒の特徴、教育目標等によって何に力を入れるかなどの状況は多種多様なはずです。そのため、あまり数値基準等にこだわり過ぎず、各学校の実態に合わせ蔵書をデザインしていくというスタンスが大切です。
このほか新聞や雑誌などの情報資源を充実させていくことも肝要です。全国SLAの「学校図書館メディア基準」では、新聞や雑誌の基準も提示しています。こちらも参考に、ぜひ充実したコレクション構成を図っていきましょう。
(斎藤 純 神奈川県川崎市立宮前平中学校司書教諭)
蔵書の配分比率(「学校図書館メディア基準」より)
INFO
学校図書館メディア基準(抜粋)
公益社団法人全国学校図書館協議会 2021年4月1日改訂
【2】印刷メディア(図書)
1 蔵書の最低基準冊数
「蔵書の最低基準冊数」の計算式は、下表を用いる。
蔵書の最低基準冊数(「学校図書館メディア基準」より)
2 蔵書の配分比率
(1)標準配分比率
蔵書の配分比率は、冊数比とし、次の数値を標準とする。義務教育学校、中等教育学校については対応する校種の標準配分比率を準用する。
(2)配分比率の運用
配分比率の運用には、次の事項を考慮する。
・教育課程、地域の実情等を考慮する。
・絵本、まんがは、主題をもとに、分類する。
・特別支援学校は、各校の実情に応じる。
・専門教育を行う学科又はコースを有する高等学校・中等教育学校は、その専門領域の図書の配分比率について考慮をする。
3 年間購入冊数と購入費
(1)年間購入冊数
年間に購入する図書の最低冊数は、最低基準冊数×0・1とする。
(2)年間購入費の算出
年間購入冊数×平均単価=年間購入費
平均単価は、全国学校図書館協議会が毎年発表する「学校図書館用図書平均単価」を適用する。
問い合わせ
公益社団法人全国学校図書館協議会
〒112-0003東京都文京区春日2-2-7
Tel=03―3814―4317
FAX=03―5804―7546
※本稿の記事は月刊「学校図書館」に掲載したものが含まれます。