全国SLA通信 新しい教育を拓く学校図書館【第3回】
4面記事GIGAスクール構想と学校図書館
1人1台端末は学校図書館の機能強化と拡張のチャンス
“学校図書館=紙の図書”というイメージは学校の教職員や保護者にいまだ根強く残っている。司書教諭や学校司書などの学校図書館担当者のなかにも、このイメージで捉えている人はいるだろう。確かに、これまでの学校図書館メディア(資料)の大部分は紙の図書だった。そして、これからも紙の図書の重要性は変わらない。
しかし、GIGAスクール構想が推進される今日にあって、それに対応した学校図書館メディア、具体的には1人1台端末で利用可能なオンラインデータベースや電子書籍などを含めたデジタルコンテンツの整備と提供が喫緊の課題となっている。
デジタルコンテンツは学校図書館が扱う対象ではないと思っている人は、もう一度、「学校図書館法」を読み直してほしい。「図書、視覚聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料」(第2条)を扱うことが規定されている。
今日の学校教育にあって、デジタルコンテンツはまさに「学校教育に必要な資料」に他ならない。実際、2016年に文部科学省が通知した「学校図書館ガイドライン」では、学校図書館メディアの種類に「電子資料(CD―ROM、ネットワーク情報資源(ネットワークを介して得られる情報コンテンツ)等)」とデジタルコンテンツを含めて明示している。
学校図書館というとき、従来、その機能や活動は学校図書館という「ハコ」と紙の図書という「モノ」に焦点を当てて考えられがちだった。GIGAスクール構想によって、「ハコ」の中に「モノ」のようには収まらないインターネットベースのデジタルコンテンツが普及することは、学校図書館の機能と活動を「ハコ」の外、すなわち学校全体にこれまで以上に拡張するチャンスでもある。
このことは、「ハコ」と「モノ」を軽視することを意味しない。そうではなく、「ハコ」を核に、内の「モノ」と外のデジタルコンテンツをハイブリッドに利用可能な学校図書館になっていくということである。
実現のためには、今からの取り組みが重要である。
第一に、学校図書館担当者自身が意識やスキルを更新していかなければならない。
第二に、情報教育の担当分掌との緊密な連携が必須である。1人1台端末になって「コンピュータ室」がなくなった学校も出始めている。学校図書館の「ハコ」を情報教育担当教員やICT支援員の新たな拠点に使ってもらい、ともに手を携えて、「ハコ」の外に広がり始めた新たな学校図書館機能を一緒に強化していきたい。分掌の統合や一体化を管理職に働きかけてもよいだろう。
第三は、管理職を含めた教職員全員に学校図書館の古いイメージを刷新してもらう必要がある。これが実は一番困難で時間がかかることかもしれない。実践を通して地道に粘り強く働きかけていく他はない。
(専修大学文学部教授 野口武悟)
第3回情報活用授業コンクール
豊かな授業実践を応募しよう!
学校図書館活用、すなわち印刷やデジタル、インターネットによる多様な資料やITCを活用した、豊かな授業実践を募集します。
主催
(公社)全国学校図書館協議会
協賛
キハラ株式会社
応募資格
国公私立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、義務教育学校、中等教育学校に勤務する教職員(教員、司書教諭、学校司書等)。
複数名の応募も可。
区分
小学校の部
中学校の部
高等学校の部
特別支援学校の部
対象とする実践
過去3年間以内の単元の授業実践。
教科・領域は、単一・複数・総合的な学習の時間・教科横断的なもの、いずれでも。
1単元につき1件の応募とします。
評価の観点
(1) 学習のねらいと実態に即した資料であったか(資料・情報の選択・収集の工夫、資料・情報の適切性)
(2) 資料・情報をどのように利用させたか(資料・情報の利用方法の工夫、適切性)
(3) 目的に合わせて指導できたか(資料・情報活用の指導の方法の工夫、適切性)
応募期間
2023年2月1日~4月5日(当日消印有効)
表彰
優秀賞、キハラ賞、情報活用推進校
※応募方法等詳細は、全国SLAのサイトをご覧ください。
https://www.j-sla.or.jp/contest/jouhoukatsuyoujugyou3.html
問い合わせ
公益社団法人全国学校図書館協議会
〒112―0003 東京都文京区春日2―2―7
Tel 03―3814―4317
FAX 03―5804―7546
※本稿の記事は月刊「学校図書館」に掲載したものが含まれます。