令和4年 通常国会質疑から【第9回】
NEWS6月に閉会した通常国会では、予算案・法案審議の他にどのような質疑があったか。衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会などでは、まだ、あまり明らかになっていない政府の考え方などが見えてくる。6月3日の衆議院文部科学委員会では、不登校問題に関し、起立性調節障害が要因になっていることを踏まえた施策展開を求める声が上がった。
自律神経の異常で循環器系の調整がうまくいかなくなる
早坂敦議員 不登校と起立性調節障害、ODと言われている、この関係性について質問したいと思います。
起立性調節障害とは、なかなか聞き慣れない病名ですが、自律神経の異常で循環器系の調整がうまくいかなくなる疾患です。心身的要素以外に、精神的、環境的要素も関わって起きることも考えられます。
日本ではまだ認知度が低いです。軽症例を含めると、小学生が約五%、中学生が約一〇%という調査結果もあります。小学校高学年から中学校、高校の思春期に発症しやすいとされているODですが、この約半数に不登校が併存していると考えられます。
文科省が二〇二一年十月に発表した問題行動調査によると、小中学校における不登校の児童生徒数は十九万六千百二十七人と、過去最多です。学年が上がるほど、不登校の児童生徒の数が増えていることが分かります。この約半数近くがODの疑いがあるかもしれません。
国として、不登校におけるODの関係の調査を把握しているのか、どれくらいと推計していますか。伺います。
病気理由の長期欠席に含まれる
文部科学省大臣官房審議官 起立性調節障害につきましては、今先生お話ございましたように、思春期に発症しやすい自律神経機能不全の一つでございまして、立ちくらみや倦怠感、動悸、頭痛などの症状を伴い、朝起きるのがつらくなることも多い疾病であるというふうに承知をしております。
私どもの令和二年度の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査におきましては、不登校とは別に、病気を理由とする長期欠席をしている児童生徒数も調査をしてございますけれども、病気を理由として長期欠席をしている児童生徒数が四万四千四百二十七人となっております。
この病気による長期欠席につきましては、その疾病内容の詳細までは把握をしてございませんけれども、当該児童生徒が医療機関において起立性調節障害と診断されている場合には、病気による長期欠席に計上されているものと考えております。
また、長期欠席のうち不登校の要因につきましては、本人や保護者の意見を踏まえて、スクールカウンセラーなど専門家を交えたアセスメントを行った上で記入することというふうに示しておりまして、より的確な把握に努めるよう要請をしてきているところでございます。
各学校で、不登校児童生徒あるいは長期欠席の児童生徒の状況についてきめ細かに把握をして、必要な支援が行われるように引き続き努めてまいりたいと考えております。
全国の教委の取り組みは
早坂議員 このOD、知られていなくて、やはり保護者の皆さんと話すと、えっ、うちの子、そうだったとか、怠けていると思って、本当は全然違って、病気なんだと。本当に、お母さんたちも周りの人たちも、これは怠けているんじゃないかと思われるんですけれども、このODについて、しっかり、もっと国の方でもやはり調査して、調べていってほしいという思いです。二〇一五年に公表されて、まだまだ日が浅いのかもしれないです、日本では。なので、しっかりお願いいたしたいと思います。
次に、ODの特徴として、朝起きれない、そして倦怠感、頭痛などの症状が見られ、不登校や引きこもりを起こしてしまいます。先ほど言ったとおり、一見怠けているように見えます、見えることもある。でも、違うんですね。これまでODの認知が進んでいない中、不登校になるのは怠けているからだという誤解も本当にこれまであったと思います。
岡山県では、教育と医療が連携し、教職員に対してODの子供たちへの配慮を促すという先進事例がありますが、全国の教育委員会での取組はどうなっていますか。伺います。
研修動画、リーフレットの作成など
文部科学省大臣官房審議官 起立性調節障害の児童生徒への対応につきましては、教職員の理解が不可欠だということで、今御紹介のございました岡山県教育委員会でガイドラインを作っておりますほか、静岡県袋井市ですとか大分県教育委員会などでも研修動画やリーフレットなどを作成、周知している事例があるというふうに承知をしております。
また、文部科学省の方でも、本年三月に発行いたしました教職員向けの指導資料として、教職員のための子供の健康相談及び保健指導の手引というものを作成して周知をしておりますけれども、その中の一つの事例といたしまして、遅刻が目立つようになった要因の一つが起立性調節障害であった生徒についての事例なども紹介をしながら、この子供については、委員御指摘のように一見怠惰というふうに思われていたところが、しっかりチェックをすることで、小児科受診をした上で、起立性調節障害であったということで、その後の支援につながっていったというような事例も紹介をしてございます。
こうした資料を参考にしながら、各学校で取組が進められるようにしていきたいというふうに思います。
教委をどう指導
早坂議員 そのガイドラインというのが、この、岡山県で出しているんですけれども、すごい分かりやすくて、だけれども、九時以降はスマホやゲームをしないとか、あと、水を一日一・五リッターから二リッター飲む、なかなか、そういう症状も詳しくQ&Aで書いてあるので、是非とも、国の方から推進して、こういうガイドラインを各自治体そして教育委員会に作っていただきたいという思いです。
やはり、子供たちとか保護者さんが分からない、学校の先生たちが分からないから、毎日うちの子供が遅刻しますと言うのもつらくなって、また、子供たちが学校に行きにくくなる、いじめの対象になったり不登校になる、本当に悪循環なので、是非とも早急に対応していただきたいという思いです。
次に、今後、文科省として、もう一度お伺いしますが、各学校、教育委員会に対してどのような指導を、取組を行っていくでしょうか。大臣、お願いいたします。
教委を通し、学校に情報を提供
文科相 起立性調節障害につきましては、各学校におきまして教職員が理解を深め、その疑いのある児童生徒に対しまして健康相談や保健指導などによりましてしっかりと対応することができるよう、指導参考資料を作成し、周知を図っております。指導参考資料は、教職員のための子供の健康相談及び保健指導の手引の中でございます。
直近では、今週、五月三十一日に開催いたしました都道府県及び指定都市教育委員会の保健担当指導主事を集めました連絡協議会におきましても、起立性調節障害の生徒への対応事例が記載されていることも示しながら、この指導参考資料について周知をしたところでございます。
文部科学省としましては、引き続き、各教育委員会を通じて、各学校に対し、必要な情報提供を行ってまいりたいと思います。
先生の今の御質疑を聞きながら思ったことは、教師がそういう病気のことをよく知って、遅刻をしたり、いろいろなケースがありますけれども、その子は病気なんだということを理解するということが一番大事であると思いますので、それを念頭に置いた周知の仕方をしたいと思っております。