日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

令和3年通常国会質疑から【第7回】

NEWS

 6月に閉会した通常国会では令和3年度予算案や法案の審議を終えた後も衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会では、教育問題をめぐってさまざまな討議があった。6月8日の文教科学委員会では、感染症対策をめぐって伊藤孝恵議員(国民民主)が口元の動きが見える「透明マスク」の有効性を主張。教育現場への配布を求めた。この質疑の後となる7月、文科省は製品化したユニ・チャームと共に口元が透明なマスクを聴覚特別支援学校と幼稚園で実証研究を行っている。

「透明マスク」の配布を

 伊藤議員 小さな子供たちが先生やお友達の表情が見えないで過ごすこのマスク生活が一年以上も続く、それが大切な脳の感受性期、また子供たちの心に全く影響がないとはどうしても思えないんです。
 一月二十八日の予算委員会では、フランス政府が保育、教育の現場に八十万枚配布した透明マスク、今私がしているこれですね、この口元が見える、表情が見える透明マスクを日本政府にも配布を検討していただきたいと要望をいたしました。大臣からは、子供たちが先生の表情や口元がよく分からないというのは確かに問題だと思う、勉強してみたいと思うと呼応してくださいました。
 そして、三月十六日の本委員会で再質問した際は、フランスのマスク、非常にいいものだなと思いました、幼児期は口元や表情を見て大人の思いを酌み取っているし、障害のある方にとっても極めて有効、マスクで口元を覆って一年を過ごした、過ごしてきたというのは大きな課題があると思っているので、国内生産も含めて大いに検討してみたいと御答弁くださいました。
 ユニ・チャームが透明マスクを発売しました。その名も、顔がみえマスク、税込み千四百八十円です。耳に掛かる布部分は抗菌生地で水洗いも可能です。去年の夏から開発を進められていたそうで、去る四月二十七日、受注開始いたしました。これ私も購入いたしましたので、このフランス・マスク同様、手元に届きましたら大臣にもお届けしたいというふうに思います。
 終わりの見えないこのマスク生活の中で、子供たちの脳と心を心配する子育て世代の声、それから保育や教育の現場から報告される子供たちの変化、大臣の元にも届いているのではないかなというふうに思います。改めて、この表情や唇の動きが見える透明マスクの配布、御検討いただけないでしょうか。

教委に奨励できる段階ではない

 萩生田文科相 マスクの着用は基本的な感染症対策として重要ですが、子供たちの心身等への影響にも十分配慮する必要があると考えています。
 三月の文教科学委員会において委員から御指摘いただいたこともあり、国内の透明素材のマスクの状況を確認いたしましたところ、議員御紹介のフランスのマスクと類似の製品も、今資料もありましたけど、ユニ・チャームで製作されて、国内で販売がされ始めていると承知をしております。
 フランスのマスクと類似の透明素材のマスクについては、表情が見えることもありますが、一方、よく密閉されていて曇ってしまうということもあると聞いており、現時点で文科省から各教育委員会等に対し一概に透明素材のマスクを奨励できる段階ではないのではないかと考えています。
 このような透明素材のマスクも含め、マスクの着用については学校において状況や用途に応じ判断されるものであり、例えば外国語や音楽の授業、聴覚特別支援学校での活動などにおいて、口の動きや表情を確認する際にマウスシールドなどが使用される例があるものと承知をしております。
 今後、厚労省の研究班が行った感染症流行による母子の生活及び健康への影響に関する調査の結果なども参考にさせていただき、子供たちの状況に応じ感染症対策が講じられるよう、マスクの着用に関する新たな知見が得られれば学校等に対して必要な情報提供を行うなど、必要な対応を検討してまいりたいと思います。

「特別支援」「就学前」だけでも

 伊藤議員 その厚労省の研究結果、六月に公表予定だというふうに聞いております。ただ、マスクに特化した、子供たちの脳や心に特化したものではないので参考になるか分かりませんけれども、大臣がそういうつれない答弁をずっとされるので、私も今回、自治体の首長さんとか仲間の地方自治体議員に六月議会とか九月議会とかでも取り組んでいただけるよう今お願いしているところなんですけれども、ある自治体の担当者は、これ、ワクチンが行き渡れば不要なのではと、そのうち必要なくなるのではというふうにおっしゃったそうです。ただ、ワクチンが打てない人がいる、望まない人もいます。子供たち、今、十一歳以下も打てません。ワクチンが行き渡るまでに半年とか一年とか、もしかしたらもっと長く掛かるかもしれない。そして、変異株への有効性や再感染の懸念もあります。本当のゲームチェンジャーである治療薬が確立されるまで、このマスク生活やっぱり続くというふうに思うんですね。
 韓国では、保育所の園長さん、それから教師の七一・六%が児童発達、特に言語発達にマスクによって口の形が見えなかったことによる悪影響があると回答しております。六三・七五%がストレスや攻撃的行動が増えた、五五%が同世代の関係での問題発生が増加したという調査結果を発表しております。
 大臣、先ほどおっしゃいましたけれども、じゃ、全て、全てに配ってくださいとは申し上げませんが、例えば特別支援の現場、それから環境の影響を特に強く受けて脳が可塑的に変化する就学前、幼稚園とかですね、そういった子供たちの学びの場に配布を御検討いただきたいというふうに切にお願いします。
 また、この投資は、子供たちの脳と心を育むのみならず、疫病というのは後世も続きます。そういったときに、政策決定に資する研究結果を残しておく、これ絶対損にはなりません。ある一定のターゲットに対してでもいいです、そういったところに関して、小さな布マスクよりこういったものを配布する、投資をする、そういった決断をしていただきたい、改めてお願いしますが、いかがでしょうか。

引き続き検討

 萩生田文科相 先生からいただいたフランス製のマスクを着けてみて、なるほど、口の動きとかがよく分かるなと思いました。たまたまいただいたのがSサイズで、小さくて使えなくて机の上に置いてあるんですけれど、場面によってはやっぱり口元が分かる方がいい授業内容たくさんあると思います。
 ただ、今、ユニ・チャームの方もここで初めて開発が終わって市場に出てきたばかりですし、もっと言えば、類似の製品がなかなかない中で、文部科学省が特定の業者の特定のマスクだけを特定の学校に配るというのはこれはまた誤解を招くことにもなるんだと思いますので、厚労省ともよく相談しながら、その御趣旨は十分理解しますし、また思いも受け止めさせていただきたいと思いますので、引き続き検討させてください。
(6月8日参議院文教科学委員会)

令和3年通常国会質疑から