令和3年通常国会質疑から【第6回】
NEWS6月に閉会した通常国会では令和3年度予算案や法案の審議を終えた後も衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会では、教育問題をめぐってさまざまな討議があった。6月9日の文部科学委員会では、議員立法で成立した「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」をめぐり、浮島智子議員(公明)は、再犯があった場合の損害賠償について質問。萩生田光一文科相は、「対象になり得る」と明言した。
「わいせつ教員のばば抜き状態」は解消せよ
浮島議員 大臣は、昨年の七月の二十二日ですけれども、本委員会における池田委員の質問に対しまして、各教育委員会は、そういう先生、つまりわいせつ教員を、早く自分の自治体から出ていってもらいたいものですから、あえてそういうことを隠して異動の資料に、ベテランの指導力の高いいい先生だなんて書いたりするわけですよ、だから、もうほとんどばば抜き状態で、次の自治体が知らないでそれを採ってしまって、後でまたそういうことを知るということになりますので、この連鎖を打ち切らなければならないというふうに御答弁をされました。全くそのとおりだと思います。
わいせつ行為で懲戒処分を受け教員免許が失効した者について、三年後には自動的に教員免許が再交付されるという制度の欠陥は、今回の法律で正しました。しかし、教育委員会のこの事なかれ体質が残っていては、結局は、このばば抜き状態、これが解消されることはありません。
今回の法律では、まず二十条で、被害に遭った児童生徒やその保護者への保護と支援をしっかり明記しています。また、この規定に基づいて、被害に遭った児童生徒を徹底的に守り支援すること、悪いのは加害者であり、加害教員は必ず懲戒免職や刑事罰を受けなくてはなりません。そのため、第十八条では、児童生徒性暴力の事実があると思われたときは、学校や教員等は設置者や警察への通報、事実確認を行わねばならないという責務、十九条では、学校設置者は専門家の協力を得て調査を行わなければならないという責務をそれぞれ明記いたしました。
そこで大臣に、この法律の一つの重要な目的は、大臣が七月に答弁された、わいせつ教員のばば抜き状態、これを根絶すること、そのためには、児童生徒性暴力が事実であると思われたにもかかわらず、学校の管理職や教育委員会の担当者がこれを放置したり握り潰したりした場合は、この法律の定める責務に違反したとし、確実に懲戒処分になるし、放置した結果、そのわいせつ教員が再度、児童生徒性暴力をした場合には、当該自治体は国家賠償法に定める賠償の責めを負うこともあり得るという旨を明言いただきたいと思います。また、そのことを教育委員会等に徹底し、周知徹底をすべきと思いますが、御見解をお伺いします。
放置・隠蔽は法律違反
萩生田文科相 教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律に基づき、学校に在籍する児童生徒等が教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われるときは、学校においては、学校の設置者への報告や所轄の警察署への通報などの措置を講ずるとともに、学校の設置者においては、専門家の協力を得つつ、事案について必要な調査を行わなければなりません。
また、任命権者である教育委員会においては、事案の調査結果も踏まえ、児童生徒性暴力等をした教育職員等に対する適正かつ厳格な懲戒処分の実施を徹底しなければなりません。
学校の管理職や教育委員会が有するこれらの責務を果たさず、児童生徒性暴力等の事実があると思われたにもかかわらず放置したり隠蔽したりする場合には、この法律の義務違反や、信用失墜行為として地方公務員法による懲戒処分の対象となり得るとともに、司法判断になりますが、国家賠償法による賠償の対象にもなり得ると考えています。
文科省としては、学校や教育委員会で放置や隠蔽のようなことが決してあってはならないと考えており、教育委員会や教育職員等に対して、今申し上げたことも含め、この法律の趣旨や各規定の内容について周知を徹底してまいることをお約束したいと思います。
(6月9日衆議院文部科学委員会)