東京・青ヶ島の学校から ~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~【第27回】
NEWS命について学ぶ
「生まれるのが当たり前じゃないんだ」「そうだ、生まれるのは奇跡なんだ」「だからこそ、今ある命を大切にしよう」。1・2年生の児童たちが、羽化できなかったさなぎを見て、言葉を交わしていました。
青ヶ島は、自然が豊かで、島の多くの部分が林や森で占められています。青ヶ島特有の植物があったり、いたるところで昆虫が見られたりします。校庭には、普段からシラサギが舞い降りています。また、夏にはカナブンが大量に発生し、夜の街灯の下には、足の踏み場がないくらい集まっています。その様な自然環境のため、小学校では、積極的に島の中に出向き、青ヶ島の自然を教材としています。
今回は、小学校の1・2年生が生活科の授業で、近くの尾山展望台へ行った時にアカタテハ(蝶)の幼虫を数匹連れてきました。児童たちは、実物投影機でテレビ画面いっぱいに映し出された映像を見ながら、毎日詳しく観察していました。その幼虫がさなぎになり、羽化すると、児童たちはとても喜び、「元気でね」と言いながら、外に逃がしていました。
そのような中、なかなか羽化しないさなぎが気になっていましたが、最後のさなぎが羽化すると、児童たちは名前を付けて、かわいがりました。担任は「どうして、この蝶だけゆっくりとうまれてきたのかな」と児童たちに問いかけ、考えさせました。児童たちは、蝶も人間も、いろいろな個性があることを感じました。
さらに担任が、落ちて羽化できなかったさなぎを見せると、子供たちには気付いたことがあったようで、それが冒頭に紹介した児童たちの会話になりました。
低学年担任の西浩明教諭は、今回の児童たちの気付きについて「飼育・観察によって、子供たちの中に蝶への愛情が生まれたことに気付きました。その時、『命について学ぶなら今だ!』と思ったんです」と語ります。同じく低学年担任の鈴木秀歩教諭は、青ヶ島の自然を教材にすることの良さについて「身近な自然と関わり合う楽しさを、体全体で感じ取れることで、地域に愛着が持てるようになるのだと思います」と語ります。
自然が豊かな青ヶ島だからこそ、生命の大切さを感じることのできる機会が多くあります。アカタテハとの関わりは、児童たちの考えたセリフによるペープサートになり、児童たちの考えた歌詞の歌にもなりました。今後、村の中で発表をするために練習を繰り返しています。
(木下和紀・青ヶ島小中学校校長、写真は画面からさなぎを観察する児童の様子と、ペープサートの練習模様)