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コロナ時代に考えたい学校問題【第60回】

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「出来上がった学校」に答えなし

 「楽しい学校の作り方」こうした本が店頭に並んでいたら、若干の期待をして手を伸ばしていた時期もあった。上手くいっている時は目にも止まらないから、正直なものである。

 手にして読むと既にやっていることも多く、僅かしか違いはない。しかし、自らの職場が楽しくは感じられないのだ。こうした時にはトラブルが続出する。職員の体調不良、子どもの不登校なども悪化していく。「体」曲がれば「影」も曲がるというものであり、体を直さなければ影は直るものではない。しかし、影ばかりを直そうと躍起になるため、さらに悪循環になっていくのが世の常である。

 楽しい学校には、自ずと活気が出る。笑顔がある。声に張りがある。行動がきびきびしている。問題の共有と解決が早い。子どもの表情に淀みがない。相互の信頼が見てとれる。柔軟にして打たれ強いのである。

 こうした学校を作りたいならば、問題の多い学校へ赴任する事である。出来上がった学校には答えはない。問題の山積する学校を次々に渡り歩く事である。一校で出来て脚光を浴びて、それだけで過信する輩は慢心者がほとんどである。私は4校ほど連続して携わったが、前例がほとんど通用しない事を実感している。似て非なるものなのである。

 だから、他人の経験談はたいした役には立たないだろうが、「本当に楽しい学校の作られ方」とでもして、失敗の本質が自己の慢心にあり、他を尊厳しない命にあることを自ら炙り出さねばならない。そして、これらのコラムを教育現場で苦心される皆様と同苦すべく、今一度再構成して出版出来たらと思ってはいる。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題