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コロナ時代に考えたい学校問題【第5回】

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講師だから見える本質

 講師を経て採用された教員と面談をした。「これまでの講師経験の中で、こうは、なりたくないと思った教師はいますか?」
 間髪入れずに、「おります」と、回答した。さらにそれはどんな人ですか?と聴いたところ、「子どもが騒いでいても、平気で事務仕事をしているんです。信じられませんでした。」「論文を何本も書いて、実践や学級経営は酷いのに本を出したり、教科書の委員になったり、今では教職大学院の教授先生ですよ」と呆れ顔を覗かせた。確かに講師は、弱い立場に置かれて、一年毎に他校へ異動するため、さまざまな先生方に接することになる。だからこそ、本質をよく見ている。

 気になって、その教授の講話を拝聴した。「僕は○○大学のアランドロンと言われています」。受講者は、唐突なジョークに無反応、完璧に滑った。翌年も同じ話をしていた。呆れた。講義も上から目線で、素晴らしい実践の紹介ばかりで、自らの苦戦や失敗は語れない。肩書きだけの講師を講師にしている担当の資質が問われた。アンケートにも同様な事が書かれていた。即刻、チェンジするように強く要望をした。

 今では、その講師の後を私が受けて担当する事になってしまった。毎回、自戒しながらも、「もっと受けたい」「また、受けたい」研修にするためにはと、指摘した手前手は抜けない。表裏なく実践と知恵を伝え、「元気を貰えました」と、必ず言わせて見せると腹を決めて講話に臨んでいる。しかし、中には「先生だから出来るんですよ」との指摘もうける。だからといって、その人に合わせたら別の不満が出る事になる。よって8割を越える満足を目指している。出口で見送る受講生の反応が一番分かりやすい。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題