生徒指導~小学校段階での考え方~【第212回】
NEWS判断力の鍛錬
生徒指導論という授業を担当していると、論として講義する為に、成り立ちや手法や関連性を教えはするが、実際の現場での対応や捉え方となると本には書いてはいないことを痛感する。すなわち、基本は座学であって知識の範囲にすぎないため、単位を取れば忘れてしまう。現場で求められる判断や行動については体感をさせる必要があり、答えのない場面に追い込む手腕が必要となる。しかし、これを大学の授業に求める事は現状では困難である。
よって、学校現場で使える生徒指導にするためには、どのような授業や鍛練が必要かを実践に基づいて記述してみたい。キーワードは「判断力の鍛練」と「実践的な知識」と「ネットワークの有効活用」の三点である。初めの「判断力の鍛練」について述べたい。
毎日のように起きる事件・事故を題材にして、立場を変えながら、見方や考え方が変わるのを体感させる手法を取る。立場を変えると判断は大きく異なる事に気がつき、時には怒りや保身や忖度などの気持ちがわいてくる。その中で為すべき判断をする事を求める訳である。勿論、本音に追い込まないと偽善になるし、明確な答えや、法に則した判断にならない。
倫理を基準にしたならば、感情とは逆の結論にもなる。判断とは価値観であり、一瞬の判断により自己の人生も変わり、相手の人生も変えてしまう。この判断基準を鍛える為に、ひき逃げの場面のドライバーと仮定して、どうするかと質問したところ、「怖くて逃げるかも」と、学生の半数近くが答えた。本音だろう。ここから「探究へ」「鍛練へ」と導く真剣勝負の授業が始まる。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)