大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」【第22回】
NEWS仲間を死へ追い込む職場
人事で、人を生かすも殺すも出来るものである。高校教諭の過労自殺が認定された。残業と部活による長時間勤務が原因のようである。和歌山で逆転裁決が出た。注目したいのは、年齢と仕事量に加えて、そこから想定される様々な人間模様である。
一番の問題は人物評価や力量を同僚や管理職はどう見ていたのかということである。すなわち過労の常態化を放置した責任がいつものように曖昧にされ問われていないように私には思えてならない。
理科を教え、硬式野球部の部長、監査、会計をやり、遅くまで練習があり、6カ月間の休日が3日間だったという。仕事の持ち帰りが1カ月で最大約100時間となる勤務をしていた。こうした異常な勤務は際立っており、周りの皆が気付くものである。加えて、保護者からの苦情や教育困難校での生徒指導の難しさなどから強い心理的負荷があったと認めての逆転裁決であった。
データからしても当然の結果である。
ポイントは人事担当他が、その人物の適性や技量を見極めず、命の大切さを教える教育の場で仲間を死へと追い込んだ事実である。断るという事の出来ない性格の人間もいる。すべて従順に受けてやらねばならないと捉えて自死した場合、児童・生徒への影響は計り知れない。
この職員の周りにいて、心配はしていたが「大したことはないと見過ごした」「自分には関係ないと見捨てた」など、所謂、関わらなかった者達への断罪は、教育者であればこそ厳しくされるべきと私はいつも思っている。これが曖昧にされるから「ブラックのウイルス」が蔓延してしまう。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)