日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

東京・青ヶ島の学校から ~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~【第11回】

NEWS

pick-up

島外から講師を招いて行った中学生対象の授業

「性」を正しく理解する

 青ヶ島中学校は今年度、東京都教育委員会の「性教育モデル授業」の実施校に応募しました。実施校全10校の1つに選考され、12月6日に産婦人科医で、「あおもり女性ヘルスケア研究所」の所長を務める蓮尾豊先生に御来島いただき、授業を実施することができました。
 本校では、養護教諭、保健体育科教諭を中心として、性教育の充実を図る工夫を行ってきました。養護教諭との合同授業にとどまらず、島しょ保健所八丈出張所の保健師の方にも出前授業を行っていただく等、性に関して正しく理解するとともに、性を大切にしようとする心をもてるように取り組んできました。
 本校の生徒は中学校を卒業すると、島内に高校がないことから進学のために島を離れ、一人暮らしをすることになります。生徒たちは、島の中では様々な方に温かく見守られ、危険なことに巡り会うことも少なかった場所から、島内と比べると希薄な人間関係の都会において、知らない人に囲まれている環境の中で、たった一人で逞しく生活していかなければなりません。
 また、産婦人科の医師が島内にはおらず、巡回診療も実施されないため、性教育について専門家である産婦人科医のお話を直接聞く機会を作ることが非常に難しいため、この事業に申し込みました。
 当日の授業においては、蓮尾先生から「自分の心と体を大切にする」をテーマに、人工妊娠中絶や避妊法といった高等学校で扱う内容についても発展的な学習内容として扱い、講義をしていただきました。
 蓮尾先生は普段、中学2年生以上を対象にお話をされているとのことでしたが、本校では貴重な機会であるということもあり、全生徒を対象とした授業の実施をお願いしました。講義される言葉の選び方一つ一つに多くの御配慮をいただき、御苦労をおかけした面もありましたが、生徒全員がしっかりと先生の言葉を聞き、2時間の授業中、集中して先生と向き合っている姿が印象的でした。
 保護者や地域の方にも参加していただくことができました。授業後、参観した職員も含めた協議会(意見交換会)において、性感染症や妊娠といった面だけではなく、「HPVワクチンについて誤解があった」「ピルの服用についてもっと早く知っておけばよかった」等、女性の健康管理という面においても非常に有意義な時間であったという言葉が聞かれました。
 また、「小学校低学年は素直に聞けるので、その頃からこういった話ができるとよいのではないだろうか」といった建設的な御意見もいただきました。
 生徒は、事後のアンケートの中で、言葉としてのまとめは多くは書かれていませんでしたが、どのアンケート項目も高評価で、本人にとっても大変貴重な学びの機会となったことがうかがえました。次年度以降、専門家を招へいした授業は難しいかもしれませんが、今回のモデル授業で得られた成果を大切にし、今後とも性教育にしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
(池田和幸・青ヶ島中学校副校長)

東京・青ヶ島の学校から~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~