教員養成の現場から【第2回】
「右往左往」の若手たち
「子供と目を合わせられない」「授業中にざわついていても注意できない」…このような声が現場から届くようになったのは数年前からである。上越教育大学学校教育実践研究センター(以下、学教センター)には、小・中学校現場経験のある特任教員が多くおり、これまでのつながりから学校現場からの声が直接入ってくる。採用試験の低倍率が続いていることから、若手教員の資質・能力について心配していたが現実の声として届くようになってきた。
平成30年の小学校教員採用倍率は7年連続で低迷し、新潟県や北海道は1.2倍、福岡県1.3倍、東京都で1.8倍であった。中学校でも3倍を切っているところもある。多くの学生は複数掛け持ち受験をしているので「受ければ受かる」状態になっている。
大量退職により教員数が不足し、若手教員ばかりの学校になってしまっている。半数以上が若手教員という学校はもはや珍しくない。一方、学校現場では、実質的に学校教育を切り盛りする中堅層の教員が少ない。働き方改革でいつも取り上げられるほど学校現場の業務は毎年増加している。少ない中堅層教員への負荷は大きく、心因性の長期病欠になるケースも多い。ますます、業務負担が増し、経験のない若手教員ばかりで右往左往することになる。
1年目の教員には初任者研修があるが、2年目以降はOJT(On the Job Training)が中心になる。しかし、頼るべき先輩教師がいない。少ない中堅層の教員は学校運営の重要ポジションについていて身動きが取れず、OJTの余裕もない。学習指導要領が変わることへの準備も待ったなし。教科道徳、外国語学習、プログラミング教育など新しい教育課題にも取り組まねばならない。特別に支援が必要な子供に対する対応にも追われ学級経営もおぼつかない。
このような事態は10年前から予測されていた。平成18年の中教審答申において「今後、大量採用期の世代が退職期を迎えることから、量及び質の両面から、優れた教員を養成・確保することが極めて重要な課題となっている。」と指摘されている。文部科学省が打ち出した政策が「教員育成指標の活用による資質・能力の向上」である。