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生徒指導~小学校段階での考え方~【第90回】

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最悪の想定は平時から

 最悪の想定は平時に行わないと身に付かない。「何とかなる」とか「そんなことは起きない」と安易な楽観主義はどこかへ依存しているから芽生える。想定外のことが起きたときに、平時にどのような意識を持っていたかがはっきりわかる。
 放課後、校長室で会議をしていると、「先生、子どもが木から落ちました。うずくまっています」と遠くから子どもの微かな声が聴こえた。声のする方へ向かうと、子どもが校庭の隅を指差していた。

 すぐに、「救急車を呼んで、担架を持ってきて」と指示して、その場に走った。背のくらいの高さに伸びていた枝から落ちて、根に横腹を打っていた。「大丈夫」と聞くと、大丈夫なふりをするのが子どもである。叱られると思うのだろう。
 腹をさわると切れてはいないが、顔色や痛がる様子から強打による内出血が想定できた。担架で保健室に運び、救急車の到着を待った。その間も様態の変化を救急車へ逐次伝えた。

 残念ながら救急隊員は私の見立てを支持せずに、救急病院へは運ばなかった。気になって確認すると腹に血がたまり搬送先で意識を失い、救急病院へ転送したことが分かった。すぐさま向かった。
 ポイントは携帯でのやり取りがあまりに多くなり、バッテリーがなくなることであった。その後、止血が成功し、開腹せずに奇跡的に一ヶ月後に退院した。ベストは尽くしたつもりではあるが、あの対応でよかったかは未だに自信がない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

生徒指導~小学校段階での考え方~