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生涯学習と社会教育の基礎

14面記事

書評

津田 英二・伊藤 真木子・鈴木 眞理 編著
働き方改革との関係にも言及

 タイトルから堅い内容に思われるかもしれないが、「おもしろい、興味深い」と感じてもらえることを企図して編まれた、社会教育論、生涯学習論の入門書である。
 その狙い通り、生涯学習と社会教育の関係、これらの概念や歴史を分かりやすく説明する他、インクルージョン、ジェンダー平等、ESDとSDGs、ICT社会における学びなど、重要な課題、現代的な課題もバランス良く取り上げられており、読みやすい。
 社会教育は日本で独自に発展した概念であること、「コミュニティ」という言葉が施策用語として使われるようになった経緯、学校における働き方改革との関係なども興味深い。
 学校教育との関係では、もともと生涯学習体系は、学校教育中心のシステムに変化を与えることを期待して提起されたが、実際にはその影響力は限定的で、従来の社会教育システムとの重なりが大きくなった。この指摘は、評者も籍を置き、生涯学習も担当したことのある文部省、文科省の組織の在り方とも重なって見える。
 戦後に平和的で文化的な民主主義社会の基礎づくりのために社会教育システムが整備されたのは、社会教育の「公共性」を表している。だが今日、学びを学習者個人の利益と見なす風潮が強まり、社会で学びを支える公共財の弱体化が進んでいる。生涯学習がなぜ、誰のために重要かを問い直す必要性も提起していると感じた。
(2420円 人言洞)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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