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心理学から学ぶ健康 こころとからだと人間関係

14面記事

書評

近藤 卓 著
自尊感情を分類し対処法解説

 WHO(世界保健機関)が健康寿命という概念を提唱して以降、人生100年時代を生きる私たちにとって健康的に生活できる期間を延ばすことが重要課題となっている。では、私たちの「健康」はどのようにして成り立ち、維持され、増進させることができるのか。本書は、こうした問いに対し、心理学の立場から答えを提示する。
 著者の近藤卓氏は、健康教育学・臨床心理学を専門とし、日本いのちの教育学会理事長を務める。40年以上にわたり大学で教鞭を執り、学生と向き合いながら試行錯誤を重ねた経験が、本書に生かされている。随所に具体的なエピソードや比喩がちりばめられ、心理学の諸理論が分かりやすく学べる構成となっているのだ。
 著者は健康の基本を「入れる」「処理する」「出す」という三つのプロセスと捉えているが、取り上げられるテーマは幅広く、ストレスへの対処法や自分の心を理解するための理論など多岐にわたる。特に自尊感情(自分を大切に思う気持ち)に言及した章では、著者が開発した「そばセット(Social&Basic Self―Esteem Test)」が紹介され、自尊感情を社会的自尊感情と基本的自尊感情に分類。それぞれを四つのタイプに分け、特徴や対処法を解説している。健康という広く深いテーマを心理学の視点からひもとき、読者に指針を与えてくれる一冊である。
(2200円 金子書房)
(井藤 元・東京理科大学教授)

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