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いい音がする文章 あなたの感性が爆発する書き方

14面記事

書評

高橋 久美子 著
言葉の語感・リズムと向き合う

 学校でも職場でも文章と向き合う時間は結構長いのではないか。時には一日中格闘することも。「書く仕事の中で書評が一番難しく感じる」という著者の言葉にドキリ。感性豊かに文章と向き合う著者に見透かされて原稿が進まなくなる。
 「いい文章は『いい音』がする」との言葉に魅力を感じた。文章には情報を得るという実用性だけではなく、感動を覚えたり心地よさを感じたりと、感性に訴えられるものがある。いい文章に触れると、読み終わっても体に残り、脳内再生されるそう。またいい文章を書くことは生物らしさの証明という。では、いい音がする文章とは何か。語感、リズム、魅力的な言葉が醸し出す空気感。人によって違いはあるだろうが、共通要素はありそう。音としての言葉を探っていくことは面白い。
 著者は作家であり、作詞家、そしてドラマーである。さすが音に敏感なはずだ。例えば「言葉はビート。音で相手の体をノックするもの」「声は世界にひとつだけの楽器。話し言葉は一種の歌」など心に気持ち良く突き刺さる言葉がちりばめられている。文に音まで付いてくるとしたら、読む相手にいい音を届けたいと思う。
 「祇園精舎の鐘の声…」で始まる『平家物語』の世界も「7・5調のリリックをラップにしたら絶対かっこいい」そうだ。音に敏感な人にはそう感じられるのか。言葉は奥深い。
(1870円 ダイヤモンド社)
(藤本鈴香・大谷大学教職アドバイザー)

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