一刀両断 実践者の視点から【第671回】
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学校事務職員による着服
小学校でPTA会費を事務職員が着服したという報道があった。借金返済に充てるためだったとされている。このような不正は、個人の問題にとどまらず、仕組みそのものにも問題があると言わざるを得ない。つまり、犯罪を起こしやすいような管理体制が放置されているということだ。
最大の問題は、事務職員の業務や金銭の流れを、事務的に処理するだけでなく、実務的にチェックできる体制が整っていないことにある。形式的な確認にとどまり、実際に何が行われているのかを把握する仕組みがない。そのため、問題が起きてもすぐには発見されない。
事務職員の管理責任は校長にあるが、実際には事務作業を任せきりにしており、詳細まで把握していないケースが多い。これは市町村の教育委員会も同様である。結果として、事務職員たちが自発的に集まり、勉強会や情報交換を通じて業務のチェックを行っているのが実情だ。
私はかねてから、管理職選考や研修において、こうした実務管理の重要性を取り上げるよう提案してきたが、あまり受け入れられてこなかった。このような姿勢が、曖昧な業務体制を放置し、不正の温床となっている。
もちろん、今回の事務職員による着服は明確な犯罪である。たとえ全額を返金したとしても、それだけで刑事告訴を見送る理由にはならない。では、管理責任は誰にあるのか。校長なのか、教育委員会なのか。責任を問われたとき、どのように説明するつもりなのだろうか。
このような問題を繰り返さないためには、個人の資質に頼るのではなく、再発を防ぐためのシステム自体を根本的に見直す必要がある。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)