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学校施設を取り巻く課題と対策

17面記事

施設特集

体育館への設置が急がれるエアコン

長寿命化改修に向けた課題

 公立学校施設は昭和40年代後半から50年代に建設された施設が多く、半数以上が築40年を経過、そのうち約7割が改修を要する状態となっている。そのため、整備手法の工夫(長寿命化改修)により費用を縮減しつつ、着実に老朽化対策を実施し、安全・安心で機能的な学校を実現していくことが求められている。築年数が経過するほど劣化による配管破損や壁材・手すりなどが落下する不具合発生率が高くなることから、定期的な点検と計画的な修繕を施していくことが欠かせなくなっている。
 老朽施設の再生を図るためには、こうした構造体の劣化対策やライフラインの更新などにより建物の耐久性を高めるとともに、省エネルギー化や多様な教育内容、学習形態による活動が可能となる環境の提供など、現代の社会的要請に応じた改修を行っていかなければならない。
 省エネでは外壁や窓に高性能断熱材や複層ガラス、二重サッシなどを取り入れて建物の断熱性能を高める。空調や換気設備の高効率化や、照明設備のLEDや人感センサーへの切り替え、自然採光システムを採用する。併せて、太陽光発電や地中熱利用、蓄電池などの創エネにも注力したい。また、脱炭素化やエコの観点から、地場材や再生木材を使用した校舎の木造化・内装木質化の推進にもつなげていきたいところだ。

豊かな学習環境への課題

 一方、これからの新しい学びに合わせて豊かな学習空間を創造していくことも必要になっている。例えば、公立小中学校の教室は、国庫補助基準面積では74㎡となっているが、9割以上の学校がそれ以下の面積になっている。電子黒板やプリンター、充電保管庫など多くの情報機材が整備される中で、手狭感が増しているのが実態だ。また、教室用机も端末を使う場合、教科書やノートを広げるスペースがなくなることから、従来より幅や奥行きが広い新JIS規格の教室用机を整備することが必要になっている。
 加えて、多様な学びのスタイルに応える教室の設置も進められているが、令和5年度時点の調査では、多目的スペースを有する公立小中学校は全体の約3割と低い。そのため、余裕教室等の空きスペースを再配置し、構造耐力上不要な壁等を撤去することで、オープンな空間を設けることなどの工夫が期待されている。さらに、特別支援学校・学級に通う児童生徒数が増加する中で、3千以上の教室不足が生じている。
 子どもたちの感染症を防ぐ教室環境の改善では、室内の換気を図る空気調和設備が整備されていない学校が多い。したがって、加湿器や空気清浄機、サーキュレーターなどを各教室に設置していく必要がある。また、衛生環境の改善ではトイレの洋式化改修が進められているが、公立小中学校の洋式率は68.3%にとどまっている。
 バリアフリー化の加速も課題の一つ。例えば、避難所に指定されているすべての学校(全体の95%)への設置を進める車いす使用者用トイレは、令和4年度時点の調査で設置している校舎は70.4%、屋内運動場は41.9%にとどまっている。このため文科省はスロープ等による段差解消やエレベーターの設置も含めて、令和7年度末までに緊急かつ集中的に整備することを求めている。

防災機能の強化への課題

 避難所となる学校施設の防災機能は、質・量ともに足りていない。特に避難所の長期化による災害関連死を防ぐためには寒暖差の激しい季節への対応が重要となるため、昨年度の補正予算では体育館の空調整備に779億円を計上し、遅れている空調整備のペースを2倍に加速することを挙げている。そのほか、電気・ガスが停止した場合の代替手段や断水時のトイレの確保など課題は山積みだ。

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