「職員室」のリニューアルに着手、情報共有できる環境へ
16面記事学びを高める、誰もがウェルになる校舎を目指して
学校施設の老朽化対策が大きな課題となる中で、東京都渋谷区が進める「新しい学校づくり」整備方針が注目されている。区では、今後20年間を目標に、計27施設ある小・中学校・幼稚園の22施設について、建て替えを順次実施していく予定。そこでは教育目標や長寿命化計画を踏まえ、老朽化が進む小中学校を建て替えるための具体的なイメージや整備水準、ロードマップ(工程表)などを整備方針としてまとめている。
具体的には、
(1)快適性・居心地に配慮した空間
(2)多様な学びを実現する可変性のある学習空間
(3)みんながストレスなく活動でき、使いやすく、誰にとっても優しい校舎
―の3点が重視されているのが特徴だ。
こうした中、教職員の執務空間である職員室においても、チームで子どもたちを支援し、情報共有ができる環境を整備していくことを挙げている。職員室に面して、児童・生徒と教員をつなげるカウンターに接する自習コーナーを設ける。職員室の自習コーナーにカウンターを設け、児童・生徒の質問を受け個別指導ができる場をつくる。職員室内に気軽な打ち合わせや共同作業ができるコミュニケーションスペースをつくる。自由に着席場所を選んで仕事をするフリーアドレスによって、教職員のコミュニケーションを促すなどだ。
職員室を「共創の場」に造り替える~チームで子どもたちを支援し、情報共有する環境を整備~
例えば、ある学校の職員室は、教職員の新たな働き方を模索する同校からの要望を受けて、教員同士のコミュニケーションを活性化させ、生産性・創造性・効率性の向上を目指した「共創の場」をコンセプトに、次のようなリニューアルを行った。
・業務や打ち合わせの内容に応じて選べるワークスペース
職員室内には2人から6人程度まで、業務や打ちあわせの内容に応じて選択できるスペースを用意。これにより教員が自然と職員室に集まり、教員間のコミュニケーションやコラボレーション(共同作業)を活性化する。
・教員が集まりたくなる居心地の良いレイアウトとデザイン
職員室内の動線はもちろん、デザインやカラー、高さ設定、来校者や教員同士の視線にも配慮をすることで、教員が自然と集まりたくなる、リラックスしながらも創造的に働ける環境づくり。
・学校と社会をつなぐハブとしての役割
職員室の中央にスクリーンとコの字型のソファで構成されたスペースを配置し、教員同士の研究発表やディスカッションが行える場所に。また、将来的にはオンラインで外部とつなぐことにより、職員室を起点に外部とのつながりを生むハブとしての役割を担うことも視野に入れている。
そのほか、区では、これからの学校施設の考え方として、教職員を始め、校務・学習支援員や地域の方々の利用が増えることも踏まえ、機能を分散させニーズに応じて使い分けできる「ユニバーサルデザイントイレ」の整備例も挙げている。
教職員の仕事の効率を上げる
一方、島根県の高等学校は、教職員の仕事の能率を上げ、生徒と関わる時間や質を向上させることを目的に、スイスの家具メーカーと協働して、職員室のレイアウトや家具を刷新した。これまで大半の業務で行ってきた個人デスクを見直し、執務、協働、集中の3つのスペースを設けることで、業務に応じて職員室内を自由に移動しながら働けるようになった。こうした働き方を日常的に行うことにより、長時間同じ姿勢でいることを避け、健康的に働くことにもつながるとしている。
加えて、デスクの配置の仕方も壁を作らないよう、システム家具を職員室入口前方に配置し、奥の後方を教職員エリア、前方を生徒エリアに区分。教職員エリアでは業務効率・能率のアップとプライバシー保持、生徒エリアでは生徒が気軽に職員室に入り、教職員とコミュニケーションがとりやすい環境を目指したという。