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保健室の先生に聞くvol.2 あの子をわかる、育ちに向き合う

19面記事

書評

澤 栄美 著
体験踏まえ 相談の仕組みも提案

 著者は長年、養護教諭として勤務し、現在は熊本市教育委員などを務める。本書は前作『保健室の先生に聞く 気になるあの子、気になるあのこと』の続編に位置付く。
 子どもの発達や心理面での課題を取り上げ、家庭環境にも目を向ける「子ども理解を深める」、子ども、保護者にどう向き合えばよいかを示す「教師の役割を再考する」、中規模の小学校と中学校での教育相談の仕組みについて見直すとともに、心について学ぶことの大切さと、学ぶ時間の確保例などを示す「適切な環境を構築するために」の3部で構成した。
 教師が直面する悩みや課題を冒頭で提起し、悩みや課題をどう受け止めればいいのかを示した後、対応策を示す書きぶりは分かりやすく、提案内容は、著者自身の現場体験を踏まえて説得力がある。
 例えば、検温時に体温計の温度を意図的に上げる子どもに向かえば、叱るのではなく、その「子どもの背景にあるつらさに目を向けた対応」を大切にすることで心を開く。
 教師に対しては、つらさを抱える子どもの現実に向き合うことで「共依存」関係にならないように、一人で抱え、対応することの「限界」を知り、専門家の声を聞くことを求める。
 生徒指導の部会や委員会の多くに養護教諭として加わった経験から、部会・委員会それぞれの役割の明確化や相互連携する「教育相談の仕組み」を提案し、学校経営の参考になる。
(1980円 さくら社)
(矢)

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