早稲田教育ブックレット32 「先生は忙しい」というけれど…それって先生の仕事?フランスの教員の働き方を参考に考える
12面記事
早稲田大学教育総合研究所 監修
職務が授業だけの仏流と比較
フランスの例を参考に、日本の教員の働き方を考え直してみようという試みである。
制度は両国で大きく違う。フランスでは公立学校の教員は全て国家公務員で、自治体が責任を負うのは施設など教育内容以外の部分(例えば給食もこれに当たる)だ。
根本的に違うのは、教員の職務が学習指導、授業に限定されており、生徒指導や進路指導は別の専門家が配置されていること。勤務時間は週当たり授業担当時間で決められ、授業時間以外は学校で勤務する義務もない。学校は校門外のことに一切責任を負わず(通学の送迎も保護者が行う)、入学式、始業式、終業式、卒業式や修学旅行などの行事もない。
一方、日本の学校は「トータルな人間形成を目指す」ため、子どもとの交流が密だが、生徒指導や進路指導などの専門家の配置はなく、丸ごと教員が抱え込む形になっている。しかも仕事量が増大の一途で、現場から悲鳴が上がる状況に陥っている。
ではフランス流が優れているかといえば、例えば教員同士で授業を見合い改善し合うような同僚性は、わが国の学校が大事にすべき強みに思える。
単純にどちらが良いと言えないし、足して2で割ることもできない。現実を直視し、「もっと頑張れ」という精神論ではなく、学校や教員の責任範囲、体制(人の配置)を見直すのが日本の教育を救う道ではないかと感じた。
(1100円 学文社)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)