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一刀両断 実践者の視点から【第665回】

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体罰は許されないが

 授業中に走り出した児童に対し、教員が「いい加減にしなさい」と叱り、頭を叩いたことで懲戒処分を受けたという。しかし、この報道には釈然としない部分がある。それは、具体的な状況が十分に伝えられていないからだ。
 もし、この行為が許容されるとすれば、それは他の児童に危害が及ぶ可能性があった場合だろう。
 落ち着きのない児童が突然走り出すような状況は、現場では決して珍しくない。体罰を一律に否定するより、まず担任の複数配置など、現場の支援体制を整えることが先ではないだろうか。
 現在、政策を決める立場にいる人々の多くは、30人以上の児童を一人で指導する現場の困難さを理解していない。かつて、ある県議は「自分たちの時代は50人近くのクラスでも問題はなかった」と豪語し、「教育は人件費ばかりかかるので削るべきだ」と議会で発言した。このような考えが予算編成に影響を与える中で、学校現場に適した制度改革が進まないのが現実である。
 その意味でも、こうした問題が起こる可能性がある場合は、事前に適切な対策を講じるべきだ。また、保護者や児童からの苦情がすべてそのまま受け入れられるような状況になると、教員は必要な指導すらためらうようになってしまう。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)

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