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一刀両断 実践者の視点から【第662回】

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働き方改革と校長の役割

 文科省が校長の役割として「働き方改革の推進」を追加したという。この報道に違和感を覚えた。なぜなら、現時点でも校長志願者は増えていないからだ。
 その理由は、責任ばかりが求められる一方で、職員に対する厳しい指導ができず、さらに予算権や人事権も実質的に持たされていないため、まるで「雇われ」のような立場に置かれているからである。
 この役割を追加するのであれば、まずは中教審の委員全員が校長を経験し、その上で議論してもらいたい。
 働き方改革が進まない最大の要因は、校長に予算権や人事権、そして学校経営を推進するための権限を与えず、実行に際して行政が十分な支援を行っていないことではないだろうか。
 学校現場の指揮官に役割だけを押し付け、責任を負わせる一方で、必要な支援をしなければ、改革は形骸化してしまうだろう。
 以前、指導力不足教員の担当者会議に出席した際、県の担当者が「該当者をしっかりとリストアップしてほしい」と求めたことがあった。私は、「もし本人が納得せず、不服として訴えた場合、県は校長をどこまで支援するつもりなのか」と問いただしたことがある。
 校長の役割として働き方改革を推進するのであれば、まずはそれを実行できる体制を整えることが基本である。必要な支援体制を示さずに役割だけを押し付けるようでは、ますます校長のなり手がいなくなるだろう。そんな事態すら想定できていないのだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、元大学教授、関東私立大学教職研究協議会教員採用部会長、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)

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