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初等教育の未来を拓く 子どもと教師のウェルビーイングに向けて

16面記事

書評

初等教育カリキュラム学会 編
AI活用や働き方巡り提言

 本書は「初等教育」における現代的な課題と今後の展望について、国の示す考え方等を切り口として、その歴史・背景を踏まえながら、総論と3部にわたり、19のテーマで23人の各学会員が論じたものである。
 例えば、第Ⅰ部「教育実践は歴史的な転換期を迎える―デジタル化の中で考える学びの本質」では、「個別最適な学び」や「GIGAスクール構想」「ICTの活用」「デジタル教科書」などのテーマを取り上げているが、特に、第7章「社会におけるAI活用の拡大と初等教育実践上の論点」では、「子どもの学びの身体性」や「初等教育で育成したいAIリテラシー」など、初等教育ならではの視点から具体的な事例を紹介している。
 また、第Ⅱ部「学校の教育課程と学習指導要領との関係を問う―カリキュラムとマネジメント」では、「学習指導要領の課題」「『社会に開かれた教育課程』の理想と現実」「幼保小連携・接続の具体例」などを扱う。面白いのは第Ⅲ部「初等教育の持続可能性―未来に向けた批判的提言」。インクルーシブ教育の在り方を特別支援教育と障害学の視点から論じたり、生徒指導の実現に向けた条件整備を提示したり、働き方改革をさまざまな想定から見直したり、最終章では「初等教育」の「初等」と「教育」の表す意味を歴史的見地から解き、まさに「批判的提言」をしている。
(2530円 大学教育出版)
(重森 栄理・広島県教育委員会乳幼児教育・生涯学習担当部長(兼)参与)

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