一刀両断 実践者の視点から【第659回】
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「品格」を育む
経営している店の専用駐車場に、ある日突然ポスターが貼られていた。驚いて連絡すると、「従業員の許可を得た」とのこと。しかし、確認しても誰もそんな話は聞いていない。結局、「自分たちが正しければ、ダメ元でやってしまえ」という姿勢が見え見えだった。非を認めることなく、「外せばいいんでしょ」という開き直りに、強い違和感を覚えた。
このように、自分の行為が問題視されてもギリギリ認めずに押し通す風潮が、社会に広がっているのではないかと感じる。恥じる気持ちや申し訳なさを持つ文化が、薄れてしまっているのかもしれない。
これを「品格」と呼ぶのかもしれないが、その品格を本気で育もうとしている教師や教科は、果たしてあるのだろうか。
著書の「国家の品格」などで知られる藤原正彦氏は、父・新田次郎氏の遺作を完成させ、小説『孤愁』を書き上げた。縁あって直筆入りの本を手に取ったが、読み進めるうちに、日本の品格に魅せられた海外の人々の思いが、ひしひしと伝わってきた。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、元大学教授、関東私立大学教職研究協議会教員採用部会長、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)