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一刀両断 実践者の視点から【第658回】

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通知表は必要か

 ある高校では、卒業式後に3学期の通知表を各クラスで配布する予定だった。しかし、印刷を担当していた教諭が印刷を忘れ、他の教諭も気づかないまま、卒業生は下校してしまったという。この出来事が象徴するように、通知表の存在価値が薄れてきていることが分かる。
 特に高校の通知表は、記述が少なく、事務的で簡素なものが多い。それに比べると、小学校の通知表には記述が多く、児童一人ひとりへの思いが感じられる。しかし、かつては「忘れ物が多い」などの本音が書かれることもあったが、現在ではそのような記述を控えるよう指導されている。
 本来、通知表に厳格な規定はないが、その内容は生徒に大きな影響を与える。特に不登校の児童・生徒に対しては、評価欄がすべて斜線で埋められることが多い。それでは、励ましたり、やる気を引き出したりすることはできないと分かっていながら、なぜこの形が続けられているのか。
 通知表は本当に必要なのか。その作成には大きな労力がかかり、働き方改革の観点からも見直しが求められるのではないだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、元大学教授、関東私立大学教職研究協議会教員採用部会長、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)

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