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夢への想いを綴り人生設計に取り組んでみよう 第18回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」

9面記事

企画特集

主催=特定非営利活動法人=NPO法人 日本FP協会
共催=日本教育新聞社
後援=文部科学省、金融庁、全国都道府県教育委員会連合会、日本PTA全国協議会、全国地方新聞社連合会、(株)Gakken、日本FP学会

 特定非営利活動法人=NPO法人 日本FP協会が主催する、第18回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」(共催:日本教育新聞社、後援:文部科学省、金融庁、全国都道府県教育委員会連合会ほか)の入賞作品が最終審査会を経てこのほど決まった。全国から寄せられた作品総数は1,472作品(学校応募45校、低学年303作品、高学年1,169作品)で、厳正な第1次選考(127作品が通過)、第2次選考(各部門24作品が通過)を経て、個人賞として低学年部門と高学年部門にそれぞれ最優秀賞1名、優秀賞10名、特別賞1名、奨励賞10名、学校賞として最優秀学校賞1校、優秀学校賞10校、特別学校賞1校が選ばれた。最優秀賞の受賞者と審査員長・北俊夫氏(総合初等教育研究所参与)のコメントのほかに受賞作品全文とその「ライフプランシート」を掲載する。

キャリア教育への入り口に
 
 「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」は、日本FP協会がキャリア教育の充実を願い、全国の小学生を対象に毎年開催している。
 同コンクールは、課題図書『夢をかなえるーFPはライフプランのサポーター』(冊子版および電子ブック版)を読み、ライフプランニングの重要性や大切さを学びながら、将来の夢を「作文」と「ライフプランシート」に描いてもらうことを目的としている。
 今回、「個人賞」「低学年の部」で最優秀賞に輝いたのは、個人応募の愛媛大学教育学部附属小学校1年・若狹早さんの「ほっかほかのパンやさん」。1年生での「最優秀賞」受賞はコンクール史上初の快挙となった。
 地元・松山市の老舗パン屋さんへの愛着を、伸びやかな文章で綴りつつ、店舗の経営についても詳しく調べており、1年生とは思えない、と高く評価する声が上がった。
 若狹さんは「どうやったらパン屋さんになれるのか、その方法を考えたかった」と応募の動機を語り、「世界にはいろいろなパンがあることを知って、思い出をお土産にする、ということを考えた」点を、作文の工夫した事だと話す。夢の実現に向けて、これから努力したいことについては「パン屋さんを経営するため、お金の計算をできるように勉強したいです」と意欲を見せている。


「低学年の部」最優秀賞 若狹早さん

 「高学年の部」で最優秀賞に輝いたのは、筑波大学附属小学校4年・石井瑛人さんの「将棋界の価値ある「歩」に」。夢は将棋の普及・振興の為に働く指導棋士だ。
 自身が通う将棋教室で指導を受ける先生方への尊敬や、指導棋士の仕事、指導棋士になるための過程を詳しく調べている。将棋や棋士に対する知識の豊富さや熱意、プロ棋士ではなく指導棋士を目指すというその独自性、またそのための設計図(=「ライフプランシート」)作りの巧みさが高い評価を得た。
 石井さんは「ライフプランシート」作りについて、「『指導棋士になる』『小学生にも教える』『国内・海外で普及活動を行なう』という三つの柱を決めてから、夢の実現に必要な資質、能力や資格などを調べました」と工夫した点を話している。また今後についても、「棋力と英会話力に加え、人との関わりを大切にし、失敗からも学んで成長し続けたい」と抱負を述べている。


「高学年の部」最優秀賞 石井瑛人さん

 なお、筑波大学附属小学校は「学校賞」最優秀学校賞も受賞した。長年コンクールへの応募を行い数多くの受賞を果たしている同校の山田誠教諭は、「今回も改めて本校児童の目標に対する意欲の高さを感じました」と喜びの声を述べた。また、「小学生の時に自分の将来について具体的に考える事は、たとえ現在考えている職業に就かなかったとしても、子どもたちの成長にとって大きな意味があると思います」とコンクールの意義を語った。

「最優秀学校賞」を受賞した筑波大学附属小学校・山田誠教諭

キャリア教育の大切な基盤

 今回・第18回のコンクールにも世相を反映した作品が数多く寄せられ、子どもたちの夢にも、新たなジャンルの職業が数多く見受けられた。
 一方で、「県庁職員」や「都道府県知事」といった、行政に携わる職業を目指す作品も現れ、公共や社会への関心の高まりも感じられた。
 審査員長の北俊夫氏(総合初等教育研究所参与)は、キャリア教育の基盤として、興味・関心を引き出すような豊かな体験をいかにさせられるか、が大切と指摘した。その上で「自己実現と併せて、人のために、社会のために役立ちたい、という社会との接点を探る視点が出てきた」と、今回のコンクールの成果を挙げた。

【個人賞 低学年の部 最優秀賞】

ほっかほかのパンやさん
愛媛大学教育学部附属小学校 1年 若狹 早

 ほっぺたがおちそうな、いいにおい。ぼくがだいすきなたべものはパンです。しょくパン、メロンパン、レーズンパン、クロワッサン。おいしいパンをつくって、たくさんの人にたべてもらいたいから、ぼくは大きくなったらパンやさんになりたいです。
 じつは、もくひょうにしているパンやさんがあります。それはぼくのくらす町、まつやまで七十五年つづいているパンやさんです。いつでもやきたてパンのいいにおいがするので、ぼくはおみせにいくのがたのしみです。まい日いろいろなしゅるいのパンがならんでいて、おきゃくさんもたくさんやってきます。町の人にずっとすきでいてもらえるパンやさんって、すごいなとおもいます。
 パンやさんについて、ぼくはとしょかんの本でしらべました。パンを上手につくるだけではなくて、し入れ、うり上げ、やちんやはたらく人のおきゅうりょうなど、お金のけいさんもひつようだそうです。ぼくはおこづかいちょうをつけています。おみせをながくつづけるには、もっとたくさんのお金のけいさんをおぼえなければいけません。
 だからぼくは、大学で「けいえい」を学びたいです。パンやさんでアルバイトしながら、大学生のあいだにヨーロッパへりゅう学して、いろいろなくにのパンをたべてみたいです。どうしてかというと、おとうさんはドイツの「プレッツェル」、おかあさんはイタリアの「フォカッチャ」が一ばんおいしかったとおしえてくれたからです。おいしいあじのおもいでをおみやげにして、大人になったらパンやさんでしゅぎょうしたいとおもいます。
 いつか、ぼくがいちにんまえになったら、ぼくのパンやさんに、ぜひパンをたべにきてください。ほっかほかのパンをよういして、みなさんをまっています。

若狭さんの「ライフプランシート」

【個人賞 高学年の部 最優秀賞】

将棋界の価値ある「歩」に
筑波大学附属小学校 4年 石井 瑛人

「一歩千金」
 羽生善治さんの好きな格言だ。一枚の歩にも大きな価値があるという意味がある。テレビでは藤井聡太さんらの活躍が目立つ。僕も幼稚園の頃から将棋ニュースをチェックしたり、タイトル戦を観ている。日々将棋と向き合い、研鑽を積む棋士たちの熱い戦い、多彩な戦法や、流れを変える一手にワクワクする。
「金底の歩は、岩より堅し。」
 今日も僕は将棋の先生から指導を受ける。強い人は歩の使い方が上手く、上達するためには歩を巧みに使えないといけない。守るべき時に守備を固め、後にじっくり攻めへと転じることが重要だ。
 週に二回、お寺の和室の一角で行われる将棋教室には、指導棋士の先生が二人、老若男女様々な人が訪れる。四歳の弟も一緒だ。
 生徒同士で対局すれば、「将棋好き」という共通点がすぐに互いの距離を縮めてくれる。人生の先輩方の駒運びには厚みがあり、色々な攻め方や受け方を教えてもらえるチャンスだ。対局の数だけ学びがある。
 先生方は、僕が見る限り、十人を相手に将棋をする「十面指し」も容易に行う。十面全ての棋譜を記憶していて、対局後の感想戦の際には的確な指導をしてくださる。アマチュアの大会に足を運べば、先生方が運営委員として大会を支える姿を目にする。僕たち生徒を見つけると、駆け寄って応援の声をかけてくれる。心強く、すごく安心する。
 僕の夢は、子どもから大人まで、日本人だけでなく海外の人にも将棋の楽しさを伝えること。僕が師事している飯島先生や西村先生のような指導棋士になりたいと思っている。
 指導棋士とは将棋普及・振興のための諸活動を行う棋士のことだ。将棋関連イベント運営、研修会の幹事補佐、将棋作の監修、将棋記者など活躍の場は多岐にわたる。将棋界を盛り上げるのは、プロ棋士だけではない。
 夢を叶えるためには、まず、小学生の間に自分の棋力を上げる必要がある。中学生になったら将棋部を創部し、切磋琢磨し合いたい。三人集まれば「文部科学大臣杯 中学校将棋団体戦」に出場できる。将棋は個人競技に思われがちだが、チーム戦という機会を通じて、甲子園に似た青春も味わえるのは楽しみだ。
 十五歳までにB1級からA2級に昇級し、プロ棋士養成機関「奨励会」へ入会。初段に昇格後、将棋連盟に承認されれば指導棋士になる。
 傍らで英語学習も怠らない。世界の将棋人口は六二○万人、囲碁は四千万人、チェスは七億人と言われている。将棋は他のゲームと違い、持ち駒を使うことができる奥深さがある。駒が何度も立ち直り、また活躍する。八一マスの上で壮大なドラマが湧き起こる。この素晴らしさを英語で伝えられるようになりたい。語り尽くせない魅力溢れる将棋を広めるため、今日も僕は僕の盤上を動き回る。

石井さんの「ライフプランシート」

第18回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」学校賞受賞校一覧

【学校賞】 ※都道府県別

・最優秀学校賞(1校)
 東京都・筑波大学附属小学校

・優秀学校賞(10校)
 群馬県・前橋市立桃木小学校
 埼玉県・星野学園小学校
 千葉県・日出学園小学校
 東京都・町田市立南第一小学校
 神奈川県・相模女子大学小学部
 岐阜県・帝京大学可児小学校
 愛知県・名古屋市立北一社小学校
 大阪府・大阪教育大学附属天王寺小学校
 岡山県・就実小学校
 熊本県・山都町立蘇陽小学校

・特別学校賞(1校)
 茨城県・日立市立水木小学校

第18回 「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」受賞者一覧

【個人賞】―低学年の部―(50音順・敬称略)

・最優秀賞(1点)
 若狹 早(愛媛県・愛媛大学教育学部附属小学校1年)

・優秀賞(10点)
 飯間 有澄(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 五十嵐 里奈(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 市川 千智(岐阜県・帝京大学可児小学校2年)
 加茂 大希(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 北村 日花(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 白木 康大郎(岐阜県・帝京大学可児小学校1年)
 戸田 陽菜(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 三浦 まりな(北海道・下川町立下川小学校3年)
 吉田 怜生(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 脇坂 真陽(東京都・筑波大学附属小学校3年)

・特別賞(1点)
 七田 翔太郎(福岡県・福岡市立姪浜小学校3年)

・奨励賞(10点)
 植木 いち華(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 織田 あゆみ(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 坂本 麻綾(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 末田 詩織(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 立薗 怜旺(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 中谷 志帆(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 宮澤 咲帆(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 山口 順玄(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 山口 友愛(東京都・筑波大学附属小学校3年)
 山本 双葉(東京都・筑波大学附属小学校3年)

【個人賞】―高学年の部―(50音順・敬称略)

・最優秀賞(1点)
 石井 瑛人(東京都・筑波大学附属小学校4年)

・優秀賞(10点)
 植田 悠司(東京都・筑波大学附属小学校5年)
 小澤 果穏(愛知県・瀬戸SOLAN学園初等部6年)
 小林 稟(東京都・筑波大学附属小学校5年)
 鈴木 大華(東京都・筑波大学附属小学校5年)
 中村 友馬(宮城県・聖ウルスラ学院英智小学校5年)
 長谷川 晴一(東京都・筑波大学附属小学校4年)
 藤川 結翔(東京都・筑波大学附属小学校5年)
 松尾 杏(東京都・町田市立南第一小学校6年)
 松本 知香(熊本県・宇城市立松橋小学校6年)
 安井 りおな(東京都・筑波大学附属小学校4年)

・特別賞(1点)
 村尾 嶺花(大阪府・大阪教育大学附属天王寺小学校5年)

・奨励賞(10点)
 五十嵐 陽士(東京都・筑波大学附属小学校4年)
 石田 迪凛(大阪府・大阪教育大学附属天王寺小学校5年)
 一戸 紗代(神奈川県・相模女子大学小学部6年)
 尾脇 多衣子(東京都・筑波大学附属小学校4年)
 田丸 尚暉(神奈川県・横浜市立永野小学校5年)
 中川 芽依(群馬県・前橋市立桃木小学校6年)
 中澤 晴子(東京都・筑波大学附属小学校4年)
 春木 絵莉香(東京都・筑波大学附属小学校5年)
 前田 紡希(大阪府・大阪教育大学附属天王寺小学校5年)
 三谷 桐子(東京都・筑波大学附属小学校5年)

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