一刀両断 実践者の視点から【第657回】
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定員内不合格
障害のある受験生の高校入学をめぐり、裁判所が原告の訴えを退けた。定員内不合格の問題は、以前から議論されている重要な課題である。学ぶ権利は誰にでも保障されるべきだが、実際の学校現場では対応の難しさが伴う。
過去に、車椅子を使用する児童への対応で悩んだことがあった。クラス全体で体育館や特別教室へ移動する際、担任や介助員が車椅子を押して移動を支援することになる。その結果、授業時間が削られ、他の児童が受けられるはずの学習時間が圧縮されることも避けられない。しかし、このような状況に対し、公然と意見を述べにくい空気があるのも事実である。
さらに、「特別支援学級には入れたくない」という保護者の意向が尊重されることで、通常学級での特別な配慮が求められるケースも多い。その負担は主に担任の肩にのしかかる。もし、将来的に「LGBTQの児童が入学するので、担任をお願いしたい」と打診された場合、果たして受け入れることができるだろうか。
このように、多様なニーズに対応するためには、相互の協力が不可欠である。しかし、現行のシステムのままでは、どちらか一方に大きな負担がかかる状況が続いてしまう。すべての児童が公平に学ぶためには、柔軟かつ持続可能な制度への改善が必要だ。日本の学校現場では、こうした難しい判断を日々迫られている。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)