今すぐできる学校の防災管理 少しの工夫でこんなに改善!
14面記事
廣内 大助・佐々木 克敬 編著
地域連携、特別支援への対策も
今年1月、政府の地震調査委員会は南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率を80%程度に引き上げ、専門家は「いつ起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らしている。だが、学校現場で行われている防災対策や訓練は形骸化しているケースも見られ、系統的な取り組みが十全になされているとは言い難い状況にある。
こうした課題に応えるべく執筆された本書は、学校現場で防災・減災に対応するための視点や対策法を具体的に示した実務書である。「災害リスクの把握」「備蓄」「集団下校・引き渡し」「子どもの心のケア」など内容は幅広いが、豊富な図や写真を活用したオールカラーの構成により、直感的に理解しやすい。 地震への備えについては多くの紙幅が割かれており、事前・発生時・事後という危機管理の各フェーズにおける対応策が丁寧に示されている。また、風水害、津波、火山災害への対策例や防災教育の実践例、地域との連携事例についても分かりやすく紹介されている。特別支援学校に特化した対策を示し、多様なニーズに応えている点も本書の特徴といえる。
著者は「各教職員が気付いた時間、場所で実行し、校内で共有することで組織としての防災力向上につなげること」の重要性を説く。防災管理について網羅的に記された本書は、学校安全主任や管理職にとって必読の書であり、学校現場の防災力向上に大いに貢献するだろう。
(3300円 東京法令出版)
(井藤 元・東京理科大学教授)