デジタル技術を活用した防災支援~AI技術やドローンで災害発生後の迅速な対応を図る~
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被災状況の把握に役立ったドローン
適切な支援を行うデータ収集に「Suica」を利用
今後の大規模災害時には、デジタル技術を駆使して被害状況の確認や物資支援の効率化、各避難所利用状況の把握、被災者支援の向上を図ることが期待されている。その一つが、能登半島地震の発生から約1カ月後にデジタル庁と防災DX官民共創協議会が実施した、JR東日本の交通系ICカード「Suica」による被災者支援だ。
避難所生活が長くなると、自宅に戻ったり車で過ごしたりする被災者が出てくるようになって行動の把握が難しくなり、適切な支援物資の配布が難しくなる。そこで、避難所での物資の受け取り時に、無料配布した「Suica」をカードリーダーにかざすことで利用状況やニーズを把握し、適切な支援を行うことに活用。同時に、そこで得たデータを石川県庁に集約することで、円滑な物資支援の効率化や被災者台帳作成などに役立てたという。
衛星システムやドローンで被災状況を把握
また、衛星システムやドローンが被災状況の把握に大いに活用された。地震発生直後、衛星画像を用いた迅速な被害調査により、被災地の広がりや被害の程度を即座に把握し、適切な救援活動を行うための情報が得ることができた。
ドローンによる航空撮影は、地形の変化や建物の倒壊状況をリアルタイムで確認することができるため、復旧作業を効率化するとともに、災害現場の安全確保にも重要な役割を果たした。近い将来には、道路が寸断した地域の避難所や孤立集落への救援物資輸送にも活用することが視野に入れられている。
さらに、スペースXとKDDIが衛生ブロードバンド「スターリンク」350台を避難所に無償提供し、通信回線のエリア復旧に貢献した。スターリンクはアンテナが小型・軽量で運びやすく、電源が確保でき、空がひらけていれば短時間での設置とWi―Fi環境構築が可能になる。通信衛星が低軌道に配置されていることから、低遅延で高速なインターネット接続ができるのが特長になっている。
ただし、今回の能登半島地震では優先物資輸送とのバッティングによる発送遅延や、現場のノウハウや認知不足により、即利用につながらなかったケースもあった。
AI技術を活用したソリューションも
一方、そのほかの通信各社も、船上基地局やドローン基地局、⾞載型基地局の設置によって通信回線の復旧に取り組んだ。その際には官民合わせて約330台の電源車・発電機も併せて投入することで、輪島市、穴水町、七尾市など多くの行政機関が震災から1~2日で通信が回復した。
また、それに先立つかたちで衛星携帯電話や簡易無線機、MCA無線機に加え、通信各社提供の衛星インターネット機器が使われ、非常用連絡手段として役立った。
今後の防災に対するデジタル技術の活用では、SNSによる投稿、気象・交通データ、カメラによる映像などの情報を、AI技術を活用して防災や危機管理分野に特化したソリューションとして提供する企業も現れている。少子高齢化や都市への人口集中が進む日本では、今後ますます災害時に人手に頼れない部分が多くなってくるのは間違いない。そのためにも、デジタルやAIを駆使して災害予測・対策を進め、災害発生後の迅速な対応を図っていく、そうした防災の方向にシフトしていく必要がある。