一刀両断 実践者の視点から【第641回】
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自粛への疑問
埼玉県で発生した道路陥没に関する報道を目にし、複雑な気持ちを抱いた。救出作業の影響で排水抑制が行われていたが、解除されたという。人命と下水管理の間で選択を迫られる状況の中、「自粛」という表現にとどまったことに違和感を覚える。
人命に自分たちの下水が影響を与えるのであれば、すべての工事を停止し、不自由を強いられてでも救助を最優先にすべきではないだろうか。発生から長時間が経過し、生命の維持が極めて困難となる状況での排水抑制解除は、すでに生存の可能性がないと判断されたためなのかとも推測される。
もし、ここに自校の子どもが巻き込まれていたとしたら、行政は同じように解除を決断したのだろうか。「人命優先」とは到底思えない。
「自粛」という判断には、どこか他人事の意識が感じられてならない。そもそも、生存の可能性がないと判断したのは、どの時点で、何を根拠にしているのか疑問が残る。
千葉県では地下の水道管が破裂する事故も発生した。学校の下水管などは、ベビーブーム世代に建設されたものが多く、すでに耐用年数を超えているケースも少なくない。
その証拠として、トイレの悪臭が問題視されることがある。もし、老朽化した配管内にガスが溜まれば、大規模な爆発につながる可能性もある。予算の限られた自治体にとって、インフラの再整備は非常に困難な課題である。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)