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「誰もが安心して旅行を楽しめるまち」を目指して~愛媛県立松山盲学校と連携した取り組み~

10面記事

企画特集

地元の高校生が製作した松山城のジオラマ

 松山市は、修学旅行の誘致に力を入れており、令和5年度からは、特別支援学校の誘致に焦点を置いた「松山ユニバーサル・ツーリズム」と名付けた取り組みを実施している。この取り組みでは、関係団体と連携し、障がいの有無などにかかわらず「誰もが安心して旅行を楽しめるまち」の実現を目指している。今回は、愛媛県立松山盲学校が同市と連携した取り組みを通して「松山ユニバーサル・ツーリズム」の一端を感じてほしい。

盲学校ってどんな学校?

 盲学校は「全く目の見えない人が点字で勉強をする学校」というイメージを持たれることが多い。しかし、在籍している児童生徒の約8割は、「ぼんやりと物の形が分かる」「文字を拡大すれば見える」「視力は問題ないが見える範囲が狭い」などの状態があり、実際は「見え方」で困っているケースの方が多い。
 一人一人の「見え方」に応じて学習環境を整えることができるのが盲学校である。

触って理解すること

 人は多くの情報を視覚から得ていると言われるが、見えない・見えにくい人は視覚以外のあらゆる感覚を使って情報を得なければならない。中でも触覚は、物を詳細に把握することや点字を読むことにつながるため、とても重要である。触って事物の状態や変化を明らかにすることを「触察」といい、盲学校の児童生徒にとって、この「触察」は非常に大切な活動である。
 「百聞は一触(いっしょく)に如かず」といわれるほど、見えない・見えにくい人にとって、触って理解するということは、情報の質を高め、何よりも世界を広げることにつながる。

手で見る松山城

 同校は、松山市観光・国際交流課や地元の高校生と連携して、修学旅行の事前学習資料を触察し、使用感を伝えアドバイスをしている。今回は、松山ユニバーサル・ツーリズムの一環として、松山城のジオラマ製作に協力した。
 生徒たちは「松山城はこんなふうになっていたんだ!」「初めて知った!」と歓声を上げ、地元の高校生が3Dプリンターで制作したジオラマを、興奮しながら夢中になって触った。一方で、「方角を分かりやすくするために、点字を付けてみては」などの意見が出たため、触察を経て体感した感想を共有する取り組みが見られた。
 現在、道後温泉本館のジオラマを制作中とのこと。どのように表現されるのか楽しみである。

ジオラマ製作を通して地元の高校生と交流を図る

五感で楽しむ松山市

 視覚障がい者はガイドブックなどを読むことが難しいため、観光地の情報にアクセスしづらく、その土地の魅力に気付きにくい。また、観光地の多くが視覚で楽しむ場所である。
 音声ガイドや触って楽しめる展示物は、障がいのある人だけの特別なものではない。障がいの有無にかかわらず、誰もが一緒に楽しめる観光地が増えることを期待している。
 「松山ユニバーサル・ツーリズム」の取り組みをきっかけに「五感で楽しむ松山市」として、今後ますます松山市の魅力が全国へ発信されることを願う。

「本物の体験」で「最高の思い出」をお手伝い

 松山市は、関係団体と協力しながら、修学旅行での「最高の思い出」作りを全力でサポートしている。松山城のジオラマをはじめとした、まちの魅力を最大限に生かし、松山だからこそできる「本物の体験」を提供していきたいと担当者は語る。

 修学旅行専用HP「おいでんか四国・松山」=https://www.oidenka-matsuyama.com/

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