「死にたい」子どもたちと向き合う11のポイント 児童精神科の現場から伝えたいこと
17面記事
河邉 憲太郎 著
心をひもとく過程、支援は
日本の自殺者数は減少傾向にあるが、子どもの自殺者数は増加傾向にあり、令和6年には暫定値だが過去最多の527人に上った。若年層の死亡原因の1位が自殺という状況は看過できない。そこで、子どもと関わる方に手にしていただきたいのが本書だ。
児童精神科医として自殺願望の子どもたちと向き合われる著者の言葉から学ぶことは大変多い。
本書には日常で出会われた「死にたい」という子どもたちの10の事例を紹介。評者は「希死念慮」の言葉に衝撃を受けた。「死にたい」理由が「何となく」という声には、今の世の中に生きづらさを覚え、現代社会が抱える問題の縮図を見ているよう。「子どもはストレスを感じ取ったり言語的に表現したりすることが難しい」という。だからこそ、学校や家庭が子どもの発するSOSや雰囲気に敏感になることが必要だろう。とはいえ、学校と家族の見立てが違うケースも多いようだ。著者がその子にじっくり向き合い、心をひもといていく過程は実に興味深い。第2章では「『死にたい気持ち』を理解する11の気づきポイント」を、第3章ではそのような子どもたちをどのように支援するのかを解説。
どの子どもも「生まれてきてよかった」と思えるような社会でありたいと切に思う。「死にたい」から「生きたい」へ変わるように何をすべきか考えさせられた。
(1980円 星和書店)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)